自社開発の地図アプリの品質がこれほどまでに悪いとは、Appleは予想だにしていなかった、と事情をよく知らない人にはそう思えるかもしれない。しかし、同社は十分な警告を受け取っていた。
米CNETが聞いたところでは、開発者らはAppleの「Maps」について、6月上旬に最初のプレリリース版が提供された直後から不満を表していたという。開発者らはバグを報告し、特定のApple従業員に電子メールを送り、開発者とAppleしか閲覧できない掲示板に不満を書き込んでいたそうだ。
App Storeで3つの「iOS」アプリを提供しているある開発者は米CNETに次のように語った。「わたしはそれぞれの(開発者)ベータ版について少なくとも1回ずつ、悲観的な意見を投稿した。そうしたのはわたしだけではなかった。開発者の間には、その地図は話にならないほどひどいため、個別の問題を報告しても無駄だというムードが漂っていたように思える。必要だったのは、ある1つの地点について間違いを報告するインターフェースではなく、むしろ、ある地域全体を選択して『このあたり全部がおかしい』と指摘するためのインターフェースだった」
米CNETは6人の開発者と話をしたが(それぞれがAppleのMapsテクノロジに依存するアプリケーションを開発している)、その全員が、自分の名前やアプリケーション名を記事には掲載しないようにと求めた。Appleとの関係が継続していることがその理由だ。しかし彼らは、開発者の間では問題が十分に文書化されていると語った。開発者たちは9月にMapsの正式版が発表されるまでに、4つのプレリリース版を使用している。
Appleからのコメントは得られなかった。
Appleの開発者フォーラムのスレッドでは、最終版の提供よりもかなり前に見つかっていたいくつかの問題が取り上げられており、AppleがMapsの提供を開始した時点でもそうした問題がまだ存在していたと開発者らは語っている。そのような問題には、場所の取り違えや、衛星画像に写り込んだ雲などが含まれており、地図もライバルのGoogleによる地図ほど詳しくなかった。「iOS 6」が発表されるまではGoogleが地図テクノロジを提供していた。
別の開発者は米CNETに「ベータ版の試用期間中、わたしはAppleのRadarシステム(報告を無視することで有名だ)にバグを報告し、フォーラムにも何度か投稿した。また懸念を表明するために、Appleの『MapKit』チームの複数の人々に電子メールを送った」と語った。
実際、あるAppleの従業員は、不満を伝えたその人物に返答しており、問題は「十分理解されている」が地図機能のアップデートについて言えることはないと述べている。その開発者は、不満を申し立てる手続きに正しく従っていたという。だが同開発者は、バグレポートのアップデートもなければ、未解決のままアプリに突然現れた問題への対処方法についての追加情報もなかったと米CNETに語っている。
その開発者は次のように話している。「われわれにとってはいら立たしい経験だった。画像がどこから提供されるものでもかまわないが、われわれは、『iOS 5』からiOS 6にアップデートされたときに、自分のアプリでユーザーに同じ体験を提供したいだけだ。実際にはOSのアップグレードによって、アプリに組み込んでいた機能のいくつかが使えなくなってしまった。画像が変わるだけだと言われていたというのに」
Appleが独自の地図テクノロジに移行することは、6月に開催された、同社の年次開発者カンファレンスで初めて正式に説明された。それ以降、この変更はGoogleとAppleの間の交渉が決裂したためだと報じられてきた。この交渉では、Googleは地図アプリに対するコントロールとブランディングを強めたいと考えたのに対して、AppleはGoogleに、音声によるターンバイターンの道案内のような重要な機能を追加してほしいと考えた。
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