国内最大規模のゲーム展示会「東京ゲームショウ2012」が9月20日から千葉県・幕張メッセにて開催された。23日まで行われる。初日となる9月20日の基調講演第1部には一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)会長の鵜之澤伸氏が登壇。「日本ゲーム産業に今、必要なコト 〜ゲームビジネス新時代の展望」と題し、変化を続けるゲーム業界の現状と未来を語った。
かつてアーケード機から始まったゲーム産業だが、コンソール機や携帯機の登場で、その環境は大きく変化してきた。そしてソーシャルゲームが登場し、スマートフォンの普及も進むなど、特にこの1、2年は産業が大きく動いている。ソーシャルゲームでは、基本無料でサービスを提供し、アイテムなどで課金をする「フリートゥプレイ」のモデルが登場し、これまでのパッケージを買ってまでゲームをプレイすることがなかったユーザーが気軽にゲームを楽しむ状況になってきた。
緩やかに右肩下がりというゲーム機市場の対して、ソーシャルゲームは今や3000億円規模の市場。だが、ソーシャルゲームを含んだ市場全体では、「まだまだ成長産業である」と鵜之澤氏は説明する。
また、ソーシャルゲームの隆盛を背景にして、パッケージで完結していたゲームに、ネットワークが加わることになり、「ゲームビジネスは変わった」(鵜之澤氏)とも語った。前述のフリートゥプレイモデルに加えて、ダウンロードコンテンツの販売、各ハードでユーザーIDを投稿してさまざまな環境でゲームを楽しめるようになるなど、“ネットワークありき”の展開が可能になったからだ。ソーシャルゲームの隆盛についても鵜之澤氏は、「ソーシャルゲームというより、(手軽に楽しめる)フリートゥプレイが受け入れられているのではないか」とも語る。
ここで鵜之澤氏はこのような新しいビジネスモデルを取り込んだゲームの事例を紹介した。
まず挙げられたのは任天堂のニンテンドー3DSだ。鵜之澤氏が任天堂代表取締役社長の岩田聡氏に聞いたところによると、同ハードのインターネット接続率は75%以上。「ファミリー向けのハードでも実は80%に近い数字」(鵜之澤氏)なのだという。こういった背景もあってか、任天堂が販売した3DS向けソフト「ファイアーエムブレム 覚醒」では、有料の追加コンテンツのダウンロード件数は120万件、その売り上げは約3億8000万円にも上った。同社はネットワークを使った課金サービスを提供する一方、店舗向けにPOSA(Point of Sales Activation)と呼ばれる決済システムを提供。ダウンロードコンテンツを既存小売店でも提供できる形を取っており、「流通関係にも配慮した戦略もすばらしい」(鵜之澤氏)と評価する。
また、鵜之澤氏が副社長を務めるバンダイナムコゲームスがPlayStation 3向けに提供する「機動戦士ガンダム バトルオペレーション」は、1日3プレイまでは無料。2時間で再び1プレイできるようになるという仕様。同タイトルは6月末に提供を開始しているが、8月末までの累計売り上げは7億円。講演前日の9月19日には8億円を超えたという。課金の75%は2時間待たずともゲームが再プレイできるエネルギーの購入とのこと。以前にソーシャルゲームなどを担当していた若手社員が企画したビジネスモデルだが、「1プレイは8分程度。このためにお金を使ってもらえるユーザーもいるのか」と驚いたという。
また、セガが提供する「ファンタシースターオンライン2」は、「SEGA ID」と呼ぶIDサービスが必要になるが、これを利用することで、PCだけでなく、今後提供されるPlaystation Vitaやスマートフォン向けタイトルと連動。マルチプラットフォームでゲームを楽しめるという。
鵜之澤氏はこういった事例を背景に「今まで家庭用ゲーム業界は『パッケージ』で考えていたが、その切り口だけでは語れなくなった」と語る。さらに、業界関係者に向けては、「コンソール向けだけでなく、いろいろな話をして欲しい。プラットフォームも(成長の指標となる)数字やパーセンテージを出して、日本のゲーム産業はまだまだ成長していることを是非発信して欲しい」と呼びかけた。
基調講演の後半は、鵜之澤氏が「日経エンタテインメント!」編集委員の品田英雄氏の質問に回答する形で行われた。
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