9月15日から18日まで開催中の東京ゲームショウ2011。ここ数年ではモバイルやソーシャルゲーム関連のブースも増えるなど、その様子にも大きな変化が見られる。その変化をゲーム業界はどう受け止めていくべきか? 3部構成となる9月15日の基調講演第1部では、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)会長の和田洋一氏が登壇。「ゲーム産業革命の本質」をテーマにした講演を行った。
「ゲームが登場して以来、マーケットは一貫して成長している。推進力のあるところばかり取り上げられるが、(さまざまなゲームが)地層のように積み重なって(市場が拡大して)いる」——和田氏はゲーム市場についてこのように説明しつつ、ゲーム市場を振り返る。
初期のゲームといえば、インベーダーゲーム(タイトーのスペースインベーダーなど)をはじめとしたアーケードゲームで、1台で1つのゲームしかできず、筐体も高価なため、業者などが購入して1ゲーム100円といった形で徴収するモデルだった。それが任天堂のファミリーコンピューターが爆発的にヒットし、家庭用ゲームという分野が登場。1プレイごとの課金制は、ソフトの購入というビジネスモデルに変化していった。
90年代には家電メーカー各社が家庭用ゲーム市場に参入するに至った。そして2000年にプレイステーション2(PS2)が登場したが、これがゲーム市場に大きな変化を与えたと和田氏は説明する。PS2はDVDも再生できるため、DVDプレーヤーとして購入する場合もある。つまりゲーム専用機に対する環境投資が減り、新規のユーザーを取り込むことを実現したという。
並行してiモード開始以降の携帯電話でもゲームが楽しめるようなり、2007年にはiPhoneも登場。ゲーム専用機でない汎用機でもゲームを楽しめる環境が築かれてきた。「環境投資額が極限まで下がった」(和田氏)
では今後、汎用機がゲーム専用機と入れ替わるということなのだろうか。和田氏はそうではなく、「ドライブするプラットフォームが変わっていく」のだと説明する。
これまでハードとソフトに閉じていたプラットフォームは、ネットワークに繋がったことで、ネットワーク自体がプラットフォームになってきた。この次の段階について、和田氏はクラウドの重要性を語る。
多くの汎用機でブラウザが標準搭載されるようになり、その上である程度のゲームが動く。そしてストレージや処理部分はクラウド上で行うようになるという。この流れによって、さらにゲームに対応する汎用機は増え、市場は拡大すると和田氏は語る。
また、市場が拡大すると予測する一方で、ゲーム会社に対して「エントリーバリアが下がるということは、カジュアルユーザーが増えるということ。客層が分散し、今までのファン以外にも当たっていかなければいけない」と注意を促す。
和田氏はまた、ゲーム市場の拡大を牽引してきた要素について、90年代は処理能力が重要だった。その後2000年以降になると、ニンテンドーDSをはじめとした新しいインプットデバイスを持つゲーム機が市場を席巻してきた。これを振り返り、インプットが重要だったと分析する。
しかし今となれば、タッチセンサーやモーションセンサーなどは汎用機に標準搭載されれており、決して珍しいものではなくなってきた。では次にゲーム市場を拡大する要素は何なのだろうか? 和田氏は「コミュニケーション」こそが重要だと語る。
2007年頃からソーシャルゲームなど、コミュニケーションの要素が肝になるゲームの隆盛が著しい。プラットフォームも課金も新しい波が一度に来たため、コンシュマーゲーム機メーカーが当初対応できなかったことを認めつつ、「お客さんの要求を受けて追求しなければいけない」(和田氏)と語った。また今後は、さまざまなエンターテインメントコンテンツとの「ガチンコ勝負になる」とも語りつつ、「多くのユーザーも待っているのでチャンスにもなる」とした。さらに次に重要になるのは3Dなど「アウトプット」の体験だと説明すが、これは汎用機では実現できるものではなく、少し時間がかかるとした。
コミュニケーション、ソーシャルといった要素によって、ゲームは元々の「従量制」に戻りつつある。ソーシャルゲームの多くがアイテム課金やフリーミアムモデルを導入しているが、これについて「価格破壊ではない。お客さんは満足したものに価格を払う制度になった。『(ソフトが)安くなって商売にならない』のではなく、ゲームのポイントを変えないといけない」と、ゲームで提供する価値をシフトする必要があると説く。ユーザーは、ゲームをプレイした経験、ログに価値を持っている。ゲームメーカーはユーザーに対してどう介在していくかが重要だとした。
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