ヒットの秘訣は「嫁レビュー」--iOS向け「パズル&ドラゴンズ」開発秘話 - (page 2)

ヒットの秘訣は“嫁レビュー”でカジュアルユーザーの意見を取り入れたこと

 このパズル&ドラゴンズの企画は、山本氏が2011年春に「Dungeon Raid(ダンジョンレイド)」という、海外のメーカーが制作したスマートフォン向けパズルゲームに出会ったことがきっかけ。「あまりにも衝撃を受けました。このゲームに負けない日本製のゲームを作ろう」と決意したという。このDungeon Raidの魅力はパズルとRPGの融合ではなく、「パズルゲームなんですけど、プレイの感覚は『不思議のダンジョン』のような、(ダンジョン探索型のRPG)『ローグ』なんです。これは発明だと思うぐらい衝撃を受けました」と説明。

 このときに山本氏が思った今後のスマートフォン向けゲームのトレンドとして、従来は既存のゲームジャンルをスマーフォン向けに作り直すだけのものが多かったが、最初からスマートフォンに合ったジャンルで、別のゲーム体験をさせることが大事だと気づかされたとのこと。

 本作のコンセプトは「パズルゲームでRPGのバトルを表現し、誰にでも楽しんでもらう」。スマートフォンにマッチしたジャンルはほかにもあるが、Dungeon Raidの影響でこの形となった。その後インターフェイスなどのデザインを作ったが、同社の森下一喜社長とのブレストで「日本人はみんな、(漫画家の)鳥山明さんのドラゴンで育っているんだ」「日本の女の子の携帯は、みんなテクマクマヤコン持ちなんだ」とのアドバイスにより、モンスターデザインの方向性や縦持ちで遊べるインターフェイスになったとのこと。

 ちなみに「こだわりのあるほうで、人の意見は素直に聞けないことが多かった」という山本氏が、森下氏のアドバイスを聞き入れたのは、「面白さが第一で売り上げは二の次」と言い切った森下氏に共感したことと、山本氏に子供ができたことも「ちょっと大人になれた」としていい方向に影響があったと山本氏自身が推察している。

 プロトタイプ制作時点でターゲット層を、簡単なパズルなどを遊ぶカジュアルユーザーである「女子中学生や主婦など」と、RPGが好きだけど複雑なゲームは遊ばないゲーム好きな「20代~30代サラリーマン」という、いわゆる初級者から中級者に絞って開発を進行。このとき、カジュアルユーザーに受け入れられやすいパズルゲームのルールを考えると、隣接した2つのブロックの位置を入れ替えて3つをそろえると消えるという3マッチパズルと思い、「Bejeweled」や「ZOOKEEPER」に近いゲームルールをしていたという。

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 そこで山本氏の奥さん(嫁)に遊ばせたところ、ドロップを斜めに動かしたり遠くの固まりに移動させて消そうとしたという。「移動のさせ方が、想像を打ち破られる衝撃的な出来事でした」とし、ロムの更新のたびに奥さんに遊ばせる“嫁レビュー”を行うようにした。また、この直感的な動きをヒントに、独特なブロックの動き方をするシステムになったという。ただし、自由に動かせることによってコンボが作れ過ぎてしまいバランスが崩れたとして、ドロップの持ち時間というシステムを導入することによってバランスが良くなったという。また、RPGのターン性バトルを表現するというコンセプトのもと、制限時間内で何回でも自由に動かせるタイム性にしなかったことも「時間に追われずにゆっくり考えるなかでの時間制限」で修練と達成感を保つベストバランスになり、大正解だったと述べた。

 嫁レビューは、画面内のドロップ数にも影響。「8×7」「7×6」「6×5」と用意され、数が多いほどコンボが作りやすくゲーマーには面白いが「誤動作しやすい」という意見により「6×5」が採用されたとのこと。また嫁レビューの結果、普段はまったくゲームを遊ばない層も取り込むことができた。また、テクニックを磨くゲーマー層にも訴求することができたという。ただ、一般的な3マッチのルールでも遊べるようになっており、そこから離れすぎてもいけないとし、カジュアル層を外さないことが重要だったと述べた。

 山本氏は、振り返って感じたこととして「ゲームデザインは奥が深くて面白いです。思いもしないところから、ゲームを遊ばない方からゲーマーの方まで遊んでいただけるゲームになりました。業界に入って十数年経ってますが、まだこんなに驚きがあるのかと思い、ゲーム開発がさらに楽しくなりました」と述べた。ちなみに開発して良かったこととして「これまで自分の作ったゲームを遊んでくれなかった嫁が、毎日遊んでくれる」、「通勤電車の中で遊んでいる方を見かける」、「業界のライバルだった人が遊んで喜んでくれた」などを挙げ、「身近な人が遊んでいる姿を見たり『面白かった』と言ってもらえることがなによりもモチベーションだと思います」。

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 そして今後のトレンドとして、カジュアルユーザーにはゲーム性を排したものがいいという意見に「それは明らかな間違え」と指摘し、ゲーム性を知ってもらうためのほんの少しの敷居の低さやヒントが足りないだけとした。「ご家族や友人など、ゲームを普段遊ばない貴重な意見を持った方が周りにたくさんいらっしゃると思います。ゲーム開発の初期段階からみなさんに意見を取りつつ、開発することで、ヒットの可能性を高められるのではないかと思います」と語った。

 なお本作は、Android版でも配信することを発表。配信時期はメーカーの公式発表によると今夏予定としているが「順調にいけば8月末ぐらいに出せるところまできています」という。また、バンダイナムコゲームスの人気作「太鼓の達人」とのコラボに続き、スクウェア・エニックスとのコラボも決定。秋以降もスマホアプリの枠を超えた展開を準備しているとのこと。さらにはコンシューマ版の展開も視野に入れていることを明かした。「会社から、スマホ版の売り上げを全部使っていいからと言われているので(笑)、気合を入れていきます」と意気込みを語った。

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