神奈川県で開催中のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2012」では、8月20日にパズドラスタジオのプロデューサーである山本大介氏が「パズル&ドラゴンズ ~嫁と開発と私~」と題した講演に登壇。制作エピソードなどを語った。
ガンホー・オンライン・エンターテイメントのiOS向けパズルRPG「パズル&ドラゴンズ」は、パズルとRPGの要素を組み合わせたゲームで、画面下にあるドロップを3つ並べて消すことによりモンスターを攻撃。そしてダンジョンを進んでいく内容。2月20日に配信を開始し、3日目でApp StoreのトップセールiPhone Appでランキング1位を達成。以降も上位に名を連ね、8月5日には110万ダウンロードを記録している。
このセッションでは、山本氏が本作の開発を振り返りながら、幅広くユーザーに楽しんでもらうゲームルールの考え方や意見取りの方法、チューニング手法について感じたことが語られた。
冒頭では、本作の開発指針をベストセラー「犬と私と10の約束」にちなんだ形で説明を行った。
1.私と気長につき合ってください
「この企画は絶対に面白い! ぜひ作りたい!」という思いだけでプロジェクトを立ち上げたと語り、これによっていいことというのは「(開発が)超楽しいです。そして継続開発も超楽しい」と、自分の作りたいという気持ちと楽しいことが一番であることを強調。
2. 私の面白さだけを見てください。それで私は幸せです
メインゲーム(本作ではパズル)の面白さだけを追求してプロトタイプを開発。ゲームのキモをしっかり作れば、ソーシャル性や射幸心に頼らず、ゲーム性だけで長く遊んでもらうことが可能と説明。
3.私の売り方だけは考えてください
本開発に移行する前に、ゲーム内で何を売りたいかを3~4つだけ考えておく。ただしKPIやマネタイズの細かいところを考えすぎると、そのあとのレベルデザインやチューニングの支障になるので、最低限のところだけ考えておく。
4.遊んでくれないのには理由があります
「無料のダウンロードゲームは簡単にダウンロードしていただけますが、それが罠となっていて、遊ばれずに放置されたりすぐやめてしまうのが多いです」とし、山本氏自身がプレイ前にやめたくなるような要素はすべて廃止したという。具体例として挙げたのは「ユーザーネームが重複登録できない」、「メールアドレスのような個人情報の要求」、「無駄なウェブページのアクセスですぐにゲームが始められない」の3つ。特にユーザーネームについては、管理上の都合で重複登録ができないゲームも多いが「みんな自分の好きな名前で遊びたいはず。でも2回もはじかれると心が折れて、3回目でもダメだと離脱される」と、危険なポイントであることを説明した。
5.有料販売クオリティで私を開発してください
本作は本来170円で販売する想定で、最後まで開発が行われていた。「170円は安いように思われますが、App Storeでは高いアプリとされます」とし、この価格で提供する覚悟で作りきったことが、現在のヒットに繋がっていると山本氏自身は分析している。無料前提だとマネタイズの方法や、コンテンツを出し切らないで壁を作ってしまいがちになるが、有料前提だとその考えがなくなるので、成功の近道と説明した。
6.ソーシャルゲームを否定しないでください
ソーシャルゲームに否定的で毛嫌いしている人も少なくないが、ソーシャルゲームにも面白い要素がたくさん詰め込まれていると説明。「『パズル&ドラゴンズ』でも、自分が体験して面白いと思った要素は、ピンポイントで入れています」とし、今後スマートフォン向けゲームやソーシャルゲームの開発の際には、実際にプレイをして面白さを体感することが重要と説いた。
7.一番遊ばせたいところはサーバーで管理してください
本作におけるダンジョンの生成アルゴリズムや、モンスターの能力など大切な要素はすべてサーバ管理を行っているため、自由に調整や追加が可能としている。これについては「クライアント依存だとAppleの承認に時間がかかり、運用計画に影響がでてしまう」と説明。
8.私にも限界があることを忘れないで
過度なチュートリアルや情報発信は、容量や通信が多くなるため、嫌がられるポイントと指摘。本作では攻略記事や公式ツイッターへのリンクを設置することで代用している。これによってユーザーが必要な時にゲーム情報に触れられ、継続率のアップにも繋がっていると山本氏は推測している。「今は攻略本を買わず、ネットでゲームの情報を調べています。そこで怪しいサイトに誘導されてしまうぐらいなら、ゲーム内で公認してリンクを貼ったほうがいい」とし、新しいメディアミックスの形でもあると説明した。
9.あなたには家族や友達がいます
社内の意見取りに加えて、開発スタッフの嫁に頻繁に意見を聞いたとのこと。これがカジュアルゲームユーザーの多いスマートフォン向けゲームで成功できた最大のポイントであるとのこと。
10.お願いです。どうか私たちをパクらないでください
山本氏は、差別化のために200本以上のアプリゲームをプレイして研究したという。そしてKONAMIのソーシャルゲーム「ドラゴンコレクション」が大ヒットしたことによる、類似ゲームだらけになってしまった状況に触れ「大好きなゲームが、近い将来に作れなくなるのではないかという危機感を持ってビビッてました」とし、5年後や10年後にちゃんとゲームの市場があるのかどうかを、ちょっとでもいいので考えてゲームを作ってほしいと訴えた。
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