ここで「あなたはなぜゲームを作るのか?」というテーマに立ち返った。桜井氏はゲームが嗜好品であるとしながらも、自分の好みで遊ぶようなゲームを作っていないという。「自分で楽しみたいなら、もっとハードなゲームを作ります。そうでなければ、これだけゲームを遊ぶ自分から初心者向けの『星のカービィ』が出てくるわけがないです」。そして「自分の社会的な役割が何かを考えることが大事」と述べた。「ここにいる方(来場者)はゲームを作っている方ですから、多くの人がスペシャリストで、できないことをできるスキルも持ってます」という。
桜井氏がゲームを作っている理由として、「好きだから」や「楽しませる」もあるが「向いているから」や「得意だから」という感覚が大きいという。またゲームは娯楽商品で生活に必要不可欠なものではないが、人が欲しいと思えるものを作って対価を得られるだけでも社会貢献になっていることを忘れてはいけないと述べた。「ゲームの制作者は、人が欲しいと思うもの、楽しいと思えるものを追求していくべきだと思います」。
その一方で消費の観点に立ち、同じものならより安いものを、同じ値段ならよりよいものを、同じ質のものなら、より信頼できるメーカーのものを買うという消費者の行動を挙げ「買われるもの」と「買われないもの」があると述べ、市場の競争はゲームや人材にも当てはまるという。日本では失敗しても一定の給与が払われるため、なかなか競争の危機感が得られにくいが、そこで自分の作品がいかに喜ばれているかを感じることが重要なのではないかと説いた。そして先ほどの消費行動にあてはめ、「ほかの人より多くのことをこなすこと」「ほかの人には思いつかない発想をすること」「信頼できる仕事をして、仲間を裏切らずまた仕事をしたいと思わせる」ことが大事だとした。そして、どんな混沌な時代でも、すごい人は必ず頭角を現すものという。
最後に桜井氏は、「スペシャリストのみなさんの役割は何かといえば、人に貢献するために、得意なことを突き詰めればいいと思います。時代と得意なことを考えて自らの役割を磨くこと。それはいつの時代にも求められることだと思います」と述べて締めくくった。
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