気象情報アプリとして知られる「ウェザーニュースタッチ」が、7月30日にリニューアルした。Android版とiOS版が用意されている。
ウェザーニュースタッチは、駅周辺などピンポイントで1時間ごと、3時間ごとの予報が無料で見られるほか、有料会員になると専用の通知機能などを利用できる。広告が表示されないことも人気の一つだ。
今回のリニューアルでは、各地の空の様子や体感情報をユーザー同士で共有できる「ウェザーリポート」の送信を有料会員でなくてもできるようにしたほか、見たい空の方角にスマートフォンを向けるとその方角から報告された空や季節のリポートが見られる「ソラサーチ」機能を搭載した。
一方で、ユーザーからはユーザー登録制度の導入や大幅にユーザーインターフェースを変更したことで戸惑いや怒りの声も多く見られ、特にApp Storeのレビューが大きく荒れる事態にもなった。今回のリニューアルの狙いや目指すものはなにか。ウェザーニューズ取締役の石橋知博氏とシステム開発本部長の西祐一郎氏に話を聞いた。
石橋氏:ある程度予想はしていましたが、いい面も悪い面も両極端な反応でしたね。いい面から言うと、私どもはこれまで天気をリポートしてくださる“ウェザーリポーター”というのを2004年から有料サービスとしてやっていたのですが、登録者数が30万人程度からリニューアル後に150万人に激増しました。
リポート数もそれまでは多い日で1日5000通程度だったのが、現在は3万通と6倍ぐらいになっています。弊社では会員の方々から寄せられたリポートをもとにゲリラ雷雨を予測したりするサービスを行っているのですが、それだけでみんなでつくる天気予報の次元がひとつ上がったなと感じています。
情報があればあるほど新しいコンテンツを企画できるので、ウェザーリポートの登録者数と1日のリポート数が私たちにとっては生命線なんです。でも一方で、iPhoneアプリのレビューの評価が両極端に分かれてしまって、大荒れしてしまって。
西氏:リニューアルで変えたのは、今まで無料だった機能を有料にしたとか、今まであったコンテンツが急になくなったとかではなくて、ちょっと場所が変わっただけなんです。
もちろん、特にリポートを熱心にしていただいたりコアにお使いいただいている方からはトップ画面ですぐにリポートできるし、見え方もよくなったとかポジティブな意見もいただいています。でも、突然大きく仕様を変えてしまったので、多くの方にとっては驚かせてしまったほうが大きかったのかなと反省して、次のバージョンアップで対応しようと思っているところです。
石橋氏:我々がこのサービスを始めた当初は、掲示板を含めてインターネット上というのは嘘の情報が多いとか荒れるとかそういうネガティブな見方が強かったのです。当時、有料にしたのは、フィーチャーフォンはID認証ができるので、そのID管理さえしっかりすれば完全にフリーなインターネットの環境と違い、荒れたりするのも防げるのではないかと思ったんです。あと、お金を払ってまで変な投稿をする人は少ないだろうと。
社内では、至極当然と思っていましたが、でもユーザーからコンテンツをいただいておきながら、課金もしてというのは、今の感覚で言うと完全に逆ですよね。
有料から無料にしようと思ったきっかけは3.11の東日本大震災のときです。そのとき一度無料で開放したのですが、2日間で4万件ぐらいの被災地からのリポートが集まりました。リポートを時間軸で見ていくと、災害がどのように変化していったかが分かるんですね。これをネット上で公開したり、都市計画や国の特定の機関や大学でも実際に活用していただきました。そのときにリポートが人の役に立てると実感しまして、それであれば数は多いほうが絶対にいいということで、これまで有料であるべき、と思っていたところを考え直しました。
石橋氏:実際ここ2週間ぐらいを見た限りだと、実は我々があれほど心配していたリポートの質が荒れるという変化はまったくないんですよ。割合で言うと0.03%程度で、1%になるときが特別というぐらい不適切な写真を送ってきたりというのは少ないですね。
もちろん、送られてきてもフィルタリングするとか、次は送れないようにするという対策は行っていますし、“守り人”と呼ばれる社内スタッフが3交代制で人によるチェックもしています。
西氏:ものすごく役立っています。まず、弊社の実況・現況技術者が現状を把握するために、実際に雲の形だとか写真から得られる情報を確認します。あとは体感の情報を地図上にプロットして、例えば北部と南部ではちょっと傾向が違うとか、その理由は寒気が入り込んでいるからだとか、そういった状況を把握します。
そして次に、予測値を計算するシステムに、例えばリポーターの方に寒いとか暑いとか体感的なものも選択肢で選んでもらったものを数値化して入力するなどの処理を行っています。あとは画像を自動的に解析し、その中から雲の量とか厚みといったデータをある程度自動的に抽出してそれを予測値のベースにするというようなシステムも現在取り組んでいるところです。
石橋氏:弊社ではこれまでにも24時間ライブ放送だったり自社メディアを通じて、限られたコミュニティーの中で可能な限りいかにユーザーの方からのリポートが重要であるか、それによって新しい天気予報がつくられているということをアピールしてきたのですが、今回、その間口が急に広がったということもあり、まだそれを伝えきれていないところがあると思っています。
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