ウェザーニューズはアプリのバージョンアップで何を目指したのか - (page 2)

--今回、起動した最初の画面に通常の予報ではなく、ユーザーリポートをもってきました。

起動したあとの初期設定時のホーム画面
起動したあとの初期設定時のホーム画面

 石橋氏:昔の人は、空を見て、山に雲がかかっているから雨降りそうだなとか、リテラシーというと何ですが、(天気を読むのが)上手かったと思うんです。天気予報を見ることによって、自然に対する感性や、まず空を見ることそのものも削られていく。自分の周りの気象というのは重要だと思うのですが、『それは天気予報がやってくれること』としてしまうことで、感性が鈍っているかもしれない。

 天気の予報を提供するだけでなく、“いま”がどうなっているか。自然の中で生きている自分が、どういう環境にいるのかという全体感、身近な周りを見た上で予報を見てもらえればいいなと。人間にとってはそれが自然な流れかなと思っているので、うまくできればいいのですが、スムーズにやりきれていないのかもしれません。

 リポートも、あの災害時でも2日で4万件だったものが、いまは1日で3万件来ることもある。何もない晴れの日でも2万5000件ぐらい。そういう意味では、リポートが自然な形で送れるようになっているのかなと。一方、使い勝手が悪くなってしまったので、改善しなければならないのですが、とにかくリポートが集まって、この瞬間の空が7月29日から全部データベースとして集まる。すごい解像度で日本上空の空が集まる。それを予報のアルゴリズムに変換し、ユーザーにすばらしい情報として返していくのはこれから始まると思っています。

--今回、起動するとまず会員登録を促されるようになりました※。そこに抵抗感を感じる人も少なくなかったわけですが、なぜ必須にしたのでしょうか。

(編集部注:インタビューした8月14日当時、Android版/iOS版ともに会員登録が必須だった。ニックネームは必須、ほか性別と生年月日は任意。なお、すでにAndroid版はスキップできるようにバージョンアップされている)

リポーター登録画面
リポーター登録画面

 石橋氏:会員登録と言いながらも、実のところは名前を入れるだけなのですが、一部のユーザーの方からの抵抗が予想以上に大きくて。そこは改善しようということで、次のバージョンアップではスキップできるようにする予定です。

 何か特別な思想があるわけではなく、どちらかというと楽しんでいただけるきっかけが最初にあればいいんじゃないかな、というぐらいの感覚でいちばん最初の手順に持ってきただけなんですね。

 実際の数字を見ると、結構入力していただいているのですが、抵抗を感じられた方の声がすごく大きく出てしまったようです。ダウンロードの数が落ちているという印象はないですし、別にお金を取るとか個人情報を取るとかいうわけでもない。

 単純に適当にニックネームでも入れていただいたらいいのですが、“会員登録”っていう言葉もいけなかったかもしれませんね。われわれはは天気予報をみんなでつくる、という感覚でやってきたので、一般ユーザーの方とズレがあったというか、麻痺していた部分があるかもしれません。そういう細かなところを含めて今回勉強しました。

--今回、GPSによるバッテリ持続時間の問題や、docomo IDを求められることによる個人情報への不安などもレビューで話題になりました。


西祐一郎氏

 西氏:端末を識別するために一度ドコモにアクセスしなければならないんです。でもそれは今回からのことではありません。

 技術的な話になってしまいますが、従前のフィーチャーフォンの場合は自動的にユーザーIDを取得して個体識別ができていました。でも、ドコモのスマートフォンになってからは、3G回線で接続しているときはIDを自動取得するのでユーザーは意識しないのですが、Wi-Fi回線のときだけID、パスワードが必要になります。それでダイアログが出てきてしまうんですが、そこはアプリが出しているわけではなく、ドコモ側の仕組みで出しているものなので、我々にはわからないところなんです。

 石橋氏:バッテリの問題もそうなのですが、GPSをオフする機能はもちろんあるのですが、それが今回わかりづらく、おそらく他にも原因があるかもしれないのですが、ウェザーニュースのアプリをインストールしたらバッテリが持たなくなったと思われた方がいらっしゃったのではないかと思います。

--今回、App Storeでのレビューは大きく評価が分かれ、5つ星をつける工作があったのではないかとも話題になりました。


石橋知博氏

 石橋氏:実は我々のほうが聞きたいところです(笑)。

 西氏:アップル側にしかわからないですよね。不適切なレビューだから削除してほしいというのは我々のほうからも言うことはできないですし、広告的なものを載せるというのももちろんできないので、我々のほうではどうすることもできません。

 石橋氏:私も最初の段階でしか追ってないので、現状がどうなっているかは把握していないのですが、内容を見ていると明らかに意見が2つに分かれているんですね。支持派の方と否定派の方が戦っているような両極端な戦争状態のようになっていて中間層がほとんどいない状態。最初の2、3日は拮抗して戦っているみたいなイメージがありました。メールの問い合わせ窓口があるのですが、あのときだけは1000通、2000通のレベルで毎日届きました。でもそちら側から届く声は既存のコアユーザーの方が多く、レビューのようなネガティブな意見は逆に少ないんですよ。なので、窓口を担当している社員はすごく活気づけられていて。

 でも、我々としては、どちらのご意見も基本的には全部お受けして可能な限り最善を尽くして対応していこうというのがスタンスです。最終的には70億人の世界中の人が天気をリポートしてくれるというのが我々にとっての夢です。

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