現代のITプロフェッショナルには技術的な専門知識とソフトスキルの双方が要求される。このようなことはずっと昔から言われ続けている。しかし、そういったソフトなスキルに対するニーズはどんどん膨らみ続けているのである。
IT技術のスキルとしてどういったものが必要になるのかは、企業によって異なっている。しかし、ほとんどのIT企業に共通するニーズがある。それがソフトスキルというわけだ。こういったニーズが求めらるのは今に始まった話ではない。30年ほど前にも、企業のIT部門は文系の学生を採用し、ビジネスアナリストやシステムアナリストへと育成することで、プログラマーとエンドユーザーの間に横たわる「コミュニケーションギャップ」を埋めようとしていた。また、最高情報責任者(CIO)の経歴を見てみると、ほぼ半数が文系出身となっている。
では、現代の企業がITプロフェッショナルに求めるソフトスキルとは、どういったものなのだろうか?
IT部門の存在意義は、企業運営の原動力となるものを生み出すために、テクノロジと人々を引き合わせるというところにある。人が集まれば必ず意見の不一致が生まれ、グループ内でコンセンサスを得る必要が出てくる。ユーザーとともに仕事を行えるIT担当者であれば、妥協点を見つけ出してプロジェクトや目標に関する合意を形成することができるうえ、必要に応じて自らのエゴを捨て去ることもできるはずだ。
読解力や作文力、そして明確かつ効果的に話す力は、いつまで経っても色あせることのないスキルである。これはIT部門について特に言えることだ。ITプロジェクトの記録をひもとくと、アイデア自体は優れていたものの、コミュニケーション不足によって失敗したプロジェクトが星の数ほど出てくるはずだ。
プロジェクトのマネジメント方法を教育するちゃんとした講座は存在している。しかしほとんどの人々は、数年かけてプロジェクトマネジメントの経験を積むことで、プロジェクトの舵をとるための直感というものを養っている。一方、生まれながらのプロジェクトマネージャーはこういった第六感を最初から身に付けている。そしてたいていの場合、第六感は教えることのできない、天賦の才なのである。それ故に、人々やタスクからプロジェクトを「読み取る」ことのできる生まれながらのプロジェクトマネージャーをIT幹部が発掘できた場合、そのプロジェクトマネージャーは逸材として扱われることになるわけだ。
IT部門の専門は技術的なものごとであるため、技術に疎いユーザーの視点に立ったり、エンドユーザーが直面している現場の状況を理解することは容易ではない。このため、エンドユーザーが持つ感覚を共有でき、彼らが働いている現場の状況を理解し、学習や使用が容易なGUIを設計できるビジネスアナリストは、アプリケーション開発における資産になるわけである。
ITプロフェッショナルという人種は、自らの専門分野に閉じこもってしまいがちだ。こういった技術知識のとりでにこもることなく、チームやプロジェクトに良いものをもたらそうと働く人材は、大局を見る能力があるとして高く評価されることになる。そして彼らは、昇進の候補者と目されるようにもなる。
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