米政府はインターネットの誕生に寄与したか--V・サーフ氏が振り返る黎明期 - (page 3)

Charles Cooper (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2012年08月01日 07時30分

--事実に反することを証明するのは不可能ではありませんが、困難です。ですが少しの間だけ、ARPANETやTCP/IPへの政府の関与がなかったと仮定しましょう。その後の物語はどうなるのでしょうか。インターネットは実現するのか、それとも実現が遅れるのでしょうか。「想像力の高まり」が十分な段階に達していたので、「1960年代までに、テクノロジストたちは別々の物理通信ネットワークを接続して1つのグローバルネットワーク、つまり『World Wide Web』を作り上げることを試みていた」と考えたCrovitz氏は正しかったのでしょうか。

Cerf氏:最終的にOSIが採用された可能性もあるでしょう。多くのエンジニアはOSIについて、過度に複雑な設計だと考えており、OSIはあまり実装されていませんでした。

--Crovitz氏は、インターネットを生み出した「完全な功績」はXeroxのパロアルト研究所(PARC)に帰属すべき、という主張を展開しています。それは事実なのでしょうか。

Cerf氏:事実ではありません。Xeroxは偉大な貢献をした功績が認められており、またそれに値します。功績には、イーサネット(ARPAが支援したハワイ大学の無線「ALOHAnet」がきっかけになった)やレーザープリンタ、「Alto」PC、「Xerox Network System(XNS)」および「PARC Universal Packet(PUP)」があります。XNSはプロプライエタリな状態が維持されました。そして、TCP/IPがより綿密に開発されていたスタンフォード大学での私のセミナーにおいて、XNSの開発者たちは同システムの運用を時折ほのめかしていましたが、商業的な観点から見ると彼らはそれほど成功しませんでした。XNSは結局、NovellシステムのIPXになり、最終的にTCP/IPが支持されたために姿を消しました。Xeroxは実際に同種のイーサネット同士を接続することができましたが、そのインターネットワーキング方法は特に拡張に優れていたわけではありませんでした。NSFNETは拡張の限界を拡大し、それが「Border Gateway Protocol(BGP)」の開発につながりました。BGPは、インターネットで最初に使用されたExterior Gateway Protocol(それより初期に存在したいくつかの実験的ゲートウェイは除く)の後継プロトコルです。インターネットは当初から、異種ネットワーク同士を接続できるように設計されていました(ARPANET、パケット無線ネット、パケット衛星ネット)。

--この質問をもっと幅広い視点から見ると、インターネットの誕生のようなことについて考えるときに、ある組織よりも別の組織に多くの責任を割り当てる方法はあるのでしょうか。あるいは、その複雑さを考えると、そんなことは実際には無駄な努力なのでしょうか。

Cerf氏:時系列に沿って、発展の流れを見ましょう。「ネットワーキング」は1960年代後半から1970年代前半にかけて広まっていましたが、具体的なインターネットの設計は、Kahn氏と私の共同研究から生まれました。われわれは、ARPANETの経験や、Louis Pouzin氏とIRIAの同氏のグループ(Cyclades/Cigaleネットワーク)との出会い、私が当初会長を務めたInternational Network Working Group(INWG)への参加、英国やノルウェー、イタリア、ドイツ、日本、フランスなどのほかのネットワーク研究者から恩恵を受けていました。われわれの最初の論文が発表された後、1974年にスタンフォード大学で具体的な設計が実施され、1975年にスタンフォード大学とBBN、ロンドン大学ユニバーシティカレッジで実装が開始されました。その後、複数の機関、特にマサチューセッツ工科大学(MIT)とスタンフォード研究所(SRI)、南カリフォルニア大学情報科学研究所(ISI)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)、NDREがその研究に深く関わるようになりました。

--私は今まで、インターネットの起源について論争が起こっているということを知りませんでした。あなたはテクノロジストとして、テクノロジ業界の歴史の政治問題化が将来のコンピュータ研究に対する連邦政府の支援に影響を及ぼす可能性を懸念していますか。

Cerf氏:そうならないことを願っています。Crovitz氏が書いたような記事は、政治的な目的のために歴史を歪曲しています。真実の物語を知りたい人々が、こうした修正主義的な解釈を額面通りに受け取らないことを願っています。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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