ヤフーが石巻でハッカソン--地域の需要を狙った多彩なアイデア

藤井涼 (編集部)2012年08月01日 10時40分
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 7月27日~29日の3日間にわたり、宮城県石巻市の石巻工業高校で、開発イベント「石巻Hackathon(ハッカソン)」が開催された。イベントには、ヤフーのエンジニアが30名以上参加したほか、現地からも約10名が参加した。

  • 「石巻Hackathon」の参加者

 なお、ヤフーは7月30日に、石巻に新事務所「ヤフー石巻復興ベース」を開設。同代表取締役社長の宮坂学氏などによる開所式も行われた。

 石巻ハッカソンは、「石巻2.0」のソフトウェア開発拠点プロジェクト「イトナブ」が開催した開発イベント。ヤフーは4月から毎月、短期集中型のコーディングイベント「Ideathon&Hackathon」を開催しており、石巻ハッカソンにはエンジニアのサポートという形で参加している。

 今回のテーマは「被災地が抱える課題を解決するITソリューション」。初日となる7月27日には課題の発表とチーム分けが行われ、メンバーは約5人1組でチームを組み、アイデアを検討した。

  • 石巻工業高校

  • 各チームの開発の様子

  • ソリューションのアイデア

 2日目の7月28日は朝から晩まで開発、また最終日の7月29日も午前まで開発が行われ、午後から1チーム5分の持ち時間でそれぞれのソリューションが発表された。各チームのサービスは、主に現地の参加者が課題を提案し、ヤフーのエンジニアが開発を担当している。

 また、審査員としてKLabの小泉彌和氏、ネットイヤーゼロの倉重宜弘氏、Hack For Japanからグーグルの及川卓也氏の3名が参加。各サービスのクオリティやビジネスモデルを審査し、すべてのプレゼン終了後に、優勝チームを発表した。

  • 各チームが5分の持ち時間でプレゼン

  • 審査員を務めた3人。左からKLabの小泉氏、ネットイヤーゼロの倉重氏、Hack For Japanの及川氏

  • イベント会場の様子

ダイビング写真を共有できるiPhoneアプリ

 1チーム目のDivers Highが発表したのは、ダイビング中の写真を共有できるiPhoneアプリ「Divecam」。iPhoneを専用のケースに入れて撮影した海中の写真や動画を、その日潜った参加者同士で共有できるアプリで、世界中のダイビングスポットもマッピングする。価格は月額525円で、全国のダイビングショップをターゲットとしている。

 提案者の高橋正祥氏は、震災後1年にわたり水中ボランティア作業を行ってきた。その中で、宮城の海を復興させたいという思いが高まり、7月下旬に宮城県でダイビングサービスをオープンしたそうだ。ダイビングの写真はDVDなどに書き込んで渡されることが多いが、Divecamで簡単にいつでも写真を閲覧・共有できるようにしたいという。

  • 専用のケースにiPhoneを収納

  • 撮影したダイビング写真を共有

  • ビジネスモデル

 審査員からは、既存の写真共有サービスとの差別化や、水中で綺麗に撮れることが重要になるとの意見が寄せられた。また、市場規模について聞かれた高橋氏は、全国に500以上のダイビングショップがあり、国内のダイビング人口は約100万人いると説明。収益については月額課金に加えて、各地の生物図鑑などを、オプションで販売したいとした。

漁師と消費者の双方向コミュニケーションEC

 2チーム目のチームワイルドが発表したのは、石巻の漁業者と消費者をつなぐ新しい形のコミュニケーションECサイト「俺の魚市場」。漁師がスマートフォンなどを通じて、その日に水揚げされた魚を動画サービス「Ustream」で紹介し、顧客はFacebookのコメントでリアルタイムに漁師に質問することができる。

 またもう1つの特徴が、市場やスーパーなどの仲介業者を介さない独自ルートで販売することで、漁業者の取り分を通常の10%から40%まで上げることができること。これによって漁業者のモチベーションアップにもつながるとしている。仲介業者のマージンコストが同社への収益となる。

  • 「俺の魚市場」のイメージ

  • ビジネスモデル

  • 消費者、漁業者、運営会社にメリット

 審査員からの、仲介業者と同等の鮮度を保てるのかという質問については、地元の運送会社などと提携することで、鮮度を維持したいとしている。また、Ustreamやスマートフォンを実際に使える漁師がどれだけいるのかという質問については、初心者でも使いやすいユーザーインターフェースなどを用意することで敷居を下げるとした。

東北3県のビジネスアイデアを募集

 3チーム目のイトナビが発表したのが「復興ツクール」。内閣府は、東北被災3県において、地域課題の解決を目的とした600の新規事業者を対象に助成金を出しているが、イトナビによれば、それぞれの事業者がお互いにどのような事業を展開しているのかを把握していない現状があるという。

 そこで復興ツクールでは、各事業者の事業内容や方針を、自由に閲覧できるサイトを構築。また、サイト内で各事業者に特化したビジネスアイデアを一般から募集する。これにより、新規事業者は無料でビジネスアイデアが得られるほか、アイデア提供者は、自身のアイデアを通じて復興を支援できるとしている。

  • サービスの概要

  • 「復興ツクール」のサイトイメージ

  • アイデア事例

 審査員からは、アイデアを無料で提供するための動機づけが重要になること、またアイデアが公開されることで盗用の可能性があるのではといった意見が挙げられていた。

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