本製品のRetinaと並ぶもう1つの大きな特徴は、従来型のMacBook Proに比べて薄型化したことだろう。従来型のMacBook ProもIntelの第3世代プロセッサを搭載したモデルが発売されたが、従来型が24.1mmの厚さであるのに対して、本製品は18mmとさらなる薄型化が実現されている。
これを実現できた要因は2つある。1つはストレージをSSD(アップル用語でのフラッシュドライブ)に限ったことで、もう1つは光学ドライブをなくしたことだ。従来型のMacBook ProではストレージとしてHDDが使われていた。言うまでもなくHDDはSSDに比べて価格あたりの容量が大きい。MacBook Proのようなプロユースでは容量が重要だと考えるユーザーも少なくないため、こうした選択になっていたのだろう。しかし、一般的な2.5インチHDDは9.5mmの厚さがあり、これが薄型化の阻害要因になっていた。
そこで、本製品はストレージを厚さ数ミリを実現できるSSDに限定しており、システム全体の薄型化を実現したのだ。ただし、従来製品では標準で500Gバイトや750Gバイトなどの大容量のストレージが実現可能だったが、店頭モデルは256Gバイトないしは512Gバイトというやや少ない容量の選択肢のみ。このあたりは薄さとのトレードオフとも言えるが、カスタマイズモデルでは上位モデルに限り768GバイトのSSDを選択できるため、容量が必要なユーザーはこちらを選択するといいだろう。
従来型ではアップルがスーパードライブと呼ぶDVDドライブが内蔵されていたが、本製品では光学ドライブは内蔵されていない。アップルもMac OS向けのアプリケーションストアを開設するなど、アプリケーションのインストールもインターネット経由となり、ホームネットワーク上にバイナリを保存しておきそこから行うということも一般的になりつつある。もはや光学ドライブを必要とするシーンは、DVDビデオなどの動画コンテンツを見るときぐらいでしかないのも事実だ。このため、必要に応じてUSB接続の光学ドライブを使えばよいと判断したのだろう。
この光学ドライブをなくすという判断は、薄型化だけでなく別のメリットもユーザーにもたらしている。光学ドライブがなくなった場所にはそれだけバッテリを置くことが可能になっており、95Whのリチウムポリマーバッテリが内蔵されている。これは、標準で大容量バッテリが搭載されているようなもので、一般的な2kg級のノートPCが50~70Wh程度のバッテリしか搭載していないことを考えると、本製品のバッテリは非常に大容量だと言えるだろう。
ただし、スペック上のバッテリ駆動時間は7時間となっており、システム全体での消費電力はやや大きいようだ。計算上の平均消費電力は13.5Wになり、一般的な14~15インチ級のノートPCの9~12W程度よりはやや高めになっている。おそらく高精細なディスプレイや単体GPU搭載あたりが、消費電力増大につながっているのではないかと推測されるが、このあたりは高解像度とのトレードオフとも言え、仕方ないところだろう。
プロセッサは前述のようにIntelの第3世代Coreプロセッサ・ファミリーが採用されている。店頭モデルでは2.3GHz(L3キャッシュ6Mバイト、ターボブースト利用時最大3.2GHz)、2.6GHz(L3キャッシュ6Mバイト、ターボブースト利用時最大3.6GHz)の2つのラインアップが用意されている。アップルの直販で購入する場合には、上位モデルを選択したときだけ2.7GHz(キャッシュ容量未公表、ターボブースト利用時3.7GHz)を選択することができる。スペックから推定すると、2.3GHzはCore i7-3610QM、2.6GHzはCore i7-3720QM、2.7GHzはCore i7-3820QMだと考えられる。このため、おそらく2.7GHzの製品のL3キャッシュは8Mバイトになるだろう(アップルはどのプロセッサのSKUを搭載しているかは明らかにしていないので、あくまで推定である)。
メインメモリはいずれも標準で8Gバイトで、一般的なアプリケーションでは十分な容量だが、Apple Storeでオーダーすれば16Gバイトに変更できる。本製品ではメモリソケット(そもそもメモリソケットがあるかどうか不明だが)にアクセスできないので、メモリを増やしておきたい人はオーダー時に増やしておくといいだろう。
端子類に関しては、デザインを優先したためか、割とすっきりした仕様になっている。Thunderbolt端子を兼ねているMini DisplayPortが2つ、USB 3.0が2つ、SDXCカードにも対応したSDカードスロット、HDMI出力端子、オーディオ出力端子ですべてだ。気になるのはUSB端子が2つしかないことだろう。このクラスのノートPCだと出張時のメインマシンとして使われることも少なくないと思うが、その時に携帯電話やデジタルカメラなどをPCのUSB端子で充電したいという人もいるだろう。そうしたとき、2つのUSB端子はそれだけで埋まってしまい、マウスも接続できないことが容易に想像できる。そうした意味では15インチノートPCでは当たり前のように最低でも3つ、できれば4つ欲しかったところだ。
ネットワーク周りだが、標準でIEEE802.11a/g/nに対応した無線LANとBluetooth 4.0に対応しているのだが、残念ながらワイヤレスWANやWiMAXなどの高速モバイルブロードバンドの内蔵は選択できない。これはアップル製品全般に言えることで本製品だけではないのだが、やはり持ち歩いて使うことを考えればそれらのモバイルブロードバンドのモデムが内蔵されている方が便利なのは言うまでもなく、ぜひ次期モデルでは対応して欲しいものだ。
また、意外と見落とされがちだが、本製品は薄型化を優先したためか、イーサネットポートが内蔵されていない。確かにWi-Fiの普及は著しいのだが、それでも出張先のホテルでイーサネットしかないという環境はまだ存在し、Wi-Fiはあっても動作が安定しないこともある。そうした意味では内蔵してほしかったところだが、オプションでThunderboltで接続されるギガビットイーサネットのドングルが用意されている。イーサネットが必要なユーザーは、購入時にそちらも併せて購入するといいだろう。
キーボードやポインティングデバイスに関しては、従来のMacBook Proと大きく変わらないアイソレーション型のキーボードとタッチパッドが採用されている。キーボードは正直に言えばストロークはかなり浅く、ストロークが深いキーボードに慣れているユーザーは当初は戸惑うだろう。この辺りは薄型化とのトレードオフの部分で、致し方ないところだ。しかし、ストロークは浅くともアイソレーションキーボードを採用することでキーとキーの間が離れており、間違って隣のキーを入力したりというタッチミスは少なくできる。
以上のように、本製品の評価はなんといっても、2880×1800ドットという超高解像度のディスプレイの価値をどう考えるかに尽きるだろう。結局のところ本製品をウェブサイトの閲覧や、文章の作成といった用途に利用するのであれば、見た目の解像度は従来のMacBook Proと変わらない訳で、あまりメリットはない──というよりもむしろ液晶パネルやGPUの消費電力によりシステム全体の平均消費電力が増えていることから、あまり効率がよいとは言えない。
しかし、写真編集や、動画編集など超高解像度のメリットが生かせるような仕事をしているプロフェッショナルユーザーには、大きな福音といえるのではないだろうか。そうしたプロフェッショナルな仕事をしているユーザーにとっては、従来は机の前に座ってデスクトップPC+大型液晶ディスプレイで行っていたような作業が、本製品ではモバイル環境化でもこなすことができるようになるだけに、その恩恵は計り知れない。
そうしたタイムイズマネーのビジネスを行っているようなプロフェッショナルユーザーにしてみれば、こうした超高解像度な液晶を搭載した本製品が下位モデルなら18万4800円、上位モデルでも23万8800円で購入できるメリットは大きい。それにより仕事の効率化が実現できると考えることができれば、決して高い買い物ではないということができるだろう。
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