新興企業の創設者を襲う精神的ストレス--感情の激しい起伏に対処するには

Ben Parr (Special to CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2012年06月06日 07時30分

 恋人と別れたときのつらさと悲しみ、惨めさを想像してほしい。そして、その翌週に宝くじに当たったと想像してみてほしい。新興企業を創設する人は、そうしたジェットコースターのような感情の起伏を体験することになる。

 Y Combinatorから資金提供を受けたある新興企業の創設者は、Paul Graham氏(Y Combinatorの共同創設者)によるエッセイの中で、「私にとって最も大きな驚きだったのは、感情の浮き沈みだ。あるときには、自分たちは次のGoogleになれると思い、島々を購入することを夢に描く。その翌日には、自分たちが完全な失敗者であることを、愛する人たちにどのように伝えるべきか思い悩む。そんな具合だ」と話す。

 起業とは困難なもので、その大半が失敗する。特に目を引くニュースにもならない。ただ、ほとんどの人が理解していないのは、共同創設者たちが感じる憂うつさやストレスが、低調な市況や誤った市場への賭けと同じくらい簡単に新興企業をつぶしてしまう場合がある、ということだ。悲劇的な結末をもたらすことさえある。

 Massive Healthの創設者であるAza Raskin氏は、「最も孤独で、最もつらいストレスの原因となるのは、内に秘めた疑念である。自分個人に対する疑念、自社の製品に対する疑念、共同創設者に対する疑念、そして、自分のビジョンに対する疑念だ。これらの疑念を安心して共有できると感じられる相手は誰もいない」と話す。

 創設者は製品の出荷や従業員の支援に忙殺されることが多いため、自分自身の感情面での健康状態に十分な注意を払わないことがある。それは、集中力とやる気、そして最終的には自社の健康状態に影響を及ぼす。もっと悪いことに、ストレスに苦しむ創設者の憂いは、チームのほかのメンバーにも伝染する。

 筆者が思い切って起業に挑戦すると決めたとき、正にこのことが自分の身に起こり始めた(われわれは2012年中に事業を開始する予定だ)。筆者は、経験豊富な起業家たちから起業が精神に及ぼす影響について警告を受けていたにもかかわらず、この感情のジェットコースターに対する備えをしていなかった。

 筆者はこれまでの人生で、これほど大きな不安や疑念に対処しなければならない状況を経験したことがない。感情面でのストレスに対処する手段を持っていることは、自分の精神的な健康だけでなく、企業の健康状態にとっても極めて重要であることを筆者は即座に学ぶこととなった。

 ストレスに対処する手段は人によって異なる。黙想することで安らぎを得る人もいれば、友達と一緒にいることでリラックスできる人もいる。創設者が覚えておくべき大切なことは、自分の感情面でのストレスレベルを認識し、自分のために使える時間を作ることだ。

 Raskin氏は、「あたかも家族の一員を雇うかのように、人を雇おう。そして、ほかに2人の創設者(自分と競争関係にない人)を見つけて、疑念を語り合うクラブを結成しよう。このクラブは、感情の浮き沈みの両方について自由に語ってよい場所だ。ほかの創設者に寄せている信頼の度合いを気まずく感じないようでは、正直になりきれていないということだ」と提案する。

 成功を収めるには失敗が必要だ。これは、筆者が会社を興してから学んだ教訓の中で、痛みを伴いはするが最も重要なものである。以下に引用するSteve Jobs氏の言葉(2005年にスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチの一部)が筆者のデスクの上に常に掲げられているのはそのためだ。

 「私のこれまで経験では、人生で大きな決断を下すのを助けてくれる最も重要な手段は、自分はいずれ死ぬ、と思い起こすことだ。なぜなら、ほぼあらゆるもの、例えば外部からの期待のすべてや、あらゆる自尊心、困惑や失敗に対するすべての恐怖といったものは、死を前にすれば簡単に消え去ってしまい、真に重要なものだけが後に残る。自分はいずれ死ぬ、と思い出すことは、私の知る限り、自分には失うものがあると考えてしまう落とし穴を回避する最良の方法だ。あなたは既に裸だ。自分の思うままに行動しない理由はない」

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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