ファーウェイジャパン社長の閻力大(エン・リダ)氏は5月30日、「ワイヤレスジャパン2012」にて「ユーザー・エクスペリエンス向上によるMBB(モバイルブロードバンド)市場の育成」と題した講演を行った。
1988年に設立され、通信機器の研究開発から製造、通信事業者向けソリューションの提供やマーケティング事業を展開する中国のハイテク企業であるファーウェイ。2005年には日本法人を設立し、日本のモバイル市場に進出して今年で7年になる同社。社長を務める閻氏は「今後のモバイルビジネスは規模から価値へとシフトする」と語る。
ファーウェイの調査機関であるmLABの報告書によると、エクスペリエンス(体験)の向上に対価を払うことに前向きなユーザーは60%。閻氏は「過去20年、ユーザー数の獲得競争に努めてきた通信事業者だが、数年以内に頭打ちを迎えることを考えると、事業者が収益をあげるためには、よりよいエクスペリエンスをユーザーにいかに提供するか」と主張する。
デバイスやコンテンツプロバイダ、サービスプロバイダを通信事業者が決定し、ユーザーはその中で選択するというのが長年のあり方だったモバイル業界。だが、これからの中核的価値はユーザー・エクスペリエンスだと閻氏は強調した。
「通信事業者、インターネットサービスプロバイダ、デバイスが各々エンドユーザーのさまざまな要件に応えていくことが重要。その上で通信事業者が果たすべき役割は、“通信速度”“待ち時間”“サービスの品質”“カスタマー・ケア”の4つ」と閻氏。
また、今後、モバイル・ネットワークを定義するのは、“ウルトラ・ブロードバンド”“待ち時間ゼロ”“ユビキタス接続”の3点とし、ネットワークインフラの要件として次のように語る。
「人の目の解像度が550dpiであることを踏まえた端末の仕様を考えると、それに見合った解像度の4インチディスプレイのスマートフォンでは1秒間に4Mbps、10インチのタブレットでは16Mbps程度の帯域がそれぞれ必要になる。さらに、最繁時に1サイトあたり400~600名前後のユーザーが接続することから逆算した場合、必要な回線キャパシティは1Gbps相当。また、人間の触覚、視覚、聴覚の反応時間を考慮した場合の待ち時間ゼロに応えられるのは、HSPA+、LTE以上になる」
一方、ユーザー・エクスペリエンスを重視した新しいMBBビジネスの収益化については、洗練されたネットワークの構築と課金方法、ユーザーの行動分析にもとづくマーケティング施策が必要と説明。「単なる土管型のパイプではなく、オンデマンド型や通信料に応じて自動で最適化できるようなネットワークインフラが必要。さらに、より柔軟な料金プランを提示することで、ユーザーが離脱せずに継続的にサービスを使い続けてもらうことも重要」と語った。
また、通信事業者としての真価を発揮するビジネスの手段として、パートナーシップを通じたWin-Win型の健全な関係性の推進を強調。「インターネットサービス事業者が通信事業者の収益機会を奪いつつあるという昨今の事情があるが、AT&Tとアマゾンの連携の例などWin-Winの好例もある。パートナーシップを通じた収益の共有を目指すべき」と提言したほか、iPhoneがAPIを外部事業者にも開放し普及が進んだ例を挙げ、通信事業者によるネットワークOSのオープン化の効果と必要性も訴えた。
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