上記の資料で、写真の引用元のトップになっているのはEtsy.comだ。こぎれいなウェブサイトに並んでいる商品は、ハンドメイドを中心としたライフスタイル商材。プレゼンテーションの仕方もあって「ちょっといいな」「友人にすすめたい」あるいは「プレゼントによさそう」と見た瞬間思わせるような商品があふれており、Pinterestとの相性の高さも頷ける。
楽天は、米国でのビジネス展開、あるいは日本での展開において、Etsyもしくはそれを越える「Pin対象」のサイトになることは、トラフィックを集め顧客数を増やす素早いパスになり得る。この楽天の視点と、よりグローバルにユーザーを増やしながら収益を上げていくために必要な「時間的猶予を得たい」というPinterestの事情が合致した結果だったとみることができる。
日本国内においてPinterestを活用した楽天のショップがどんどん増えていくか?といわれると、そのアイディアは少し安直な気がする。
例えば楽天トップページのレディースファッションカテゴリとEtsyのファッションカテゴリを比べてみると、筆者の言わんとするところも分かるのではないだろうか。つまり楽天がPinterestを生かすには、サイトやショップやその運営方法などを相当変革する必要があり、楽天が日本市場において、すぐにPinterestの恩恵を受けることはないだろう。
しかし、Pinterestのようなコンテンツプラットホームは、今後の楽天でのショップ作りのインターフェースとして活用しうる可能性や、ショップに対して多様なプレゼンテーションの方法を提供することにもつながる。もちろんよい写真を準備しておく必要はあるが、簡単な翻訳で世界向けにビジネスを行うショップ作りも可能になる。
伸びるECサイトの法則は、Pinterestがきっかけを作ることができる「写真を見ていいなと思って購入する」といったものだけではない。もう少し事情は複雑だ。
例えばLot18は、12カ月で55万人の会員に到達し、50万本を売り上げるニューヨークをベースとするワインのフラッシュセールサイトだ。フラッシュセールサイトとは、メールマガジンなどで会員に時限性のセールを知らせて購買を誘うスタイルであり、Guilt Groupのビジネスモデルと同じだ。
Lot18のシステムやビジネスモデルに大きな新規性はなく、1年間で急成長した理由は、「米国の中でもワイン通のニューヨーカーが絶大な信頼を寄せるソムリエのようなECサイト」というポジションを獲得したことだった。「ワイン選びは見栄を張りたいが詳しくない」という問題を解決している点は、ビジネスモデルではなくブランディングと背景を流れるストーリー作りの賜といえる。
その他にもキュレーターモデルや、興味のつながりを活用したギャザリングなど、ソーシャルコマースに分類される様々なモデルも試されており、むしろPinterestによるトラフィック誘導のモデルはシンプルに見えてくるほどだ。
一方で、消費者としての立場を考えたとき、最近買ったお気に入りのモノを、どのように知り、どのように購入するに至ったのか──。実はこの自分の行動にこそ、大きなヒントが隠されている。興味や関心、情報が多様化する中から共通項を発見する作業が、まさに続けられている最中なのである。
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