実際Twitterなどで多かった声として「そもそもなぜ坂口さんは奨学金を受けられなくなったか」という話がある。彼女が受けていた奨学金は早稲田大学校友会と日本学生支援機構のものだ。このうち前者は、成績優秀者に対しては、返還義務なしの奨学金が受けられる。しかし一方で、成績優秀でなければ奨学金が停止するというものでもあった。
坂口さんはこれについて「それを知らなかったため、バイトをしながら大学に通って、4年ぎりぎりで卒業しようとしたところ引っかかってしまった」と振り返る。「条件を調べてなかったのは自分が悪い。確認を怠った」と語るものの、一つ奨学金が止まると事実上学費の支払いは不可能となるため自暴自棄になり、結果的に退学となっていた。だが、「もしお金の問題が解決し、卒業できるならしてみたい。やり直そう」という思いからstudygiftで支援を受けようと決めた。
「飲み会や旅行の写真もオンラインに上がっていたが、その人の今を見て欲しい」と語る家入氏。studygiftに出ると言うことは、顔やプライベートをさらすことになるが、「学生、女性というところで心配する声も多い。僕も心配しているし、コミュニケーションをとっていく」という。
また家入氏は、「studygiftは、学費を集めるのはもちろんだが、リターンの内容を考えると年間5000円のメルマガ会員にも近い。彼女が卒業したあと、もし彼女のファンになってくる人が1人でも生まれれば、卒業後もメルマガを読んでくれる人は出てくる。その5000円が、就活に失敗しても生活するためのベーシックインカム、人生の支援になりえる可能性があると期待している。全員を救えるプラットフォームではない。選択肢を増やしたいだけ」とその意義を説明する。坂口さんも支援者について「190人の親が出来た様な感覚」と語る。
ではstudygiftは、「就学に困った学生を広くあまねく助ける」という趣旨のサービスなのだろうか? 家入氏はそれを否定する。「不幸に優劣はない。『もっと助けるべき人がいるのではないか』という批判があったが、それにはピンとこなかった。おぼれている時には、声を上げないとそのままおぼれてしまう。最終的には声を出せない人も助けられればいいが、まずは、自分というものを出して学費を集めることが重要と思っている」(家入氏)
ヨシナガ氏も「studygiftは学費を必要とする人全てを救えるような偉大なサービスではないかもしれない。studygiftだからこそ救える人というのはあると思う。今後、就学したいが目立てる何かがない『普通の子』が出てきたときは、サクセスは難しくなる可能性もある」と語る。
家入氏は加えて、「誰を支援するのか」が明確な点が重要だと語る。「今までの寄付などは、『この人に(寄付する)』ではなかった。例え開示されても、誰に寄付したと言うところまでは開示されない。自分の意志で、『この子に支援する』ということが大事」。studygiftにはすでに30件近い応募が来ているという。「今回の炎上を見て応募している。リスクも分かっているが、熱意がある」(家入氏)
賛同も批判も数多く集まったstudygift。今後に向けた課題はまだまだ多いが、まずは坂口さんを支援する人たち、そして彼女が大学に戻るお金は集まった。livertyではstudygiftをブラッシュアップし、この新しい試みへの理解を深めてもらうというが、ソーシャルメディアとの温度差はまだ大きい。
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