守安氏は「今後の戦略」として、世界に向けてどう戦っていくかについての考え方を示した。先にも触れたようにMobageでは日本・韓国・中国・米国の4つのプラットフォームを有しており、日本は成熟期、中国と韓国は導入期、米国は成長期を表現。特に米国については「今出て行かなくていつ行くんだというタイミングになっている」として、最優先でタイトルの提供をしてほしいとアピール。
さらに登壇したDeNA取締役兼ngmocoCEOのNeil Young氏は「米国や欧州が日本のソーシャルゲームデザインを受け入れ始めている」とし、またアプリだけでなくウェブタイトルでも十分勝負できるとした。また欧米市場は日本市場の10倍に相当するので、売り上げ1位を目指さなくとも、しっかり位置づけることは可能だという。その上で成功の鍵としてあげたのは、マネタイズできる「カードバトルとイベントノウハウ」、市場を最大限に活かすためのiOSとAndroidのクロスプラットフォームでの展開、各国に対応したローカライゼーション、テーマやアート(イラスト)、UIなどの最適化であるカルチャライゼーションを挙げた。
たとえば日本の農園ゲームはシンプルでわかりやすいグラフィックとなっているが、シンプルでわかりやすいグラフィックだが、欧米の農園ゲームではリアリステッィクな演出が必要。また漫画やアニメテイストの強いキャラクターは日本で人気が出るが、やはりこちらもリアリティが必要だとしている。タイトルの視覚的アピールやわかりやすいUI、米国で受け入れられるテーマを選ぶことなども挙げられていた。具体的には「欧米の女性キャラクターは通常、もっと服を身にまとっているのでしっかり服を着せることも大事。もっとも露出度は多少高くても大丈夫」とコメントし、場内の笑いを誘った一幕も。
守安氏は冒頭で話していたRage of Bahamutが米国売り上げ1位になったことについて、「驚くべきことではない」という。むしろ意味合いとして大きいのが、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)が「非常に美しい」という。よく指摘される「日本のソーシャルゲーム市場は大きいが、米国のユーザーとは違い、日本だけで成り立つものではないか」ということに触れ、 これまで展開してきたタイトルと「Rage of Bahamut」のKPIは異なり、日本でヒットしているタイトルに近い数値を示しているという。これにより守安氏は、日本が独特なのではなく、世界中に同じようなマーケットが出来てくることを確信した。またこの結果は「欧米はアプリじゃ無いと難しい」という見方も崩して、ブラウザタイプのものでもいけると思っているという。
そして2009年10月にリリースした怪盗ロワイヤルを契機に、産業構造を変えてしまうほど成長カーブが一気に変わってしまうほど、日本におけるソーシャルゲームのマーケットにおいて、エポックメイキングなタイトルだったという。そして今回Rage of Bahamutが売り上げ1位になったことを契機に、本格的なマーケットが一気に作られると予測している。
ここで守安氏が「なるべく早く欧米市場に展開すべきだ」と提案。「それこそサービスしているタイトルを欧米展開するかと今月中には決めて、2カ月や3カ月後ぐらいにはリリースするぐらいのスピード感で進めてほしい」とコメント。
またオリジナルのソーシャルゲームの作り方についても言及。これまでは日本ではフィーチャーフォン向けのブラウザゲームで、欧米はスマートフォン向けアプリゲームがメインだったことから、まずはフィーチャーフォン向けに開発しスマートフォンへ横展開を行い、欧米向けにはアプリベースで作り直すのが日本のディベロッパーには一般的だったと語った。
しかしながら状況が変わりつつあるとし、日本においては半年以内にスマートフォンからのコイン消費がフィーチャーフォンを上回る見込んでおり、欧米でも、Rage of Bahamutがヒットしたことから、アプリではなくてもウェブでも十分通用すると見ている。今後はスマートフォン特化で制作すること、そして日本と欧米の両方で受け入れられるアートテーマのものを、スマートフォンのブラウザゲームで世界同時展開を最初から狙うという、作り方を変えるタイミングにきているとした。またブラウザゲームの資産やスキルを持っているデベロッパーでも世界に進出できると語った。なおMobageでもスマートフォンで作りやすく新しいゲームエンジンを用意するとした。
守安氏はDeNAはゲーム産業というよりはインターネット産業でやってきた会社として「インターネット産業において日本のサービスが欧米よりも先に行っているものはこれまでになく、この先も出てくるかわからない。だがソーシャルゲームについては少なくとも数年のアドバンテージを持っている。ここでみなさんと欧米に出て行って、日本発のソーシャルゲームを利用してもらいたい」と語って締めくくった。
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