日本マイクロソフトは4月7日、学生IT技術コンテスト「Imagine Cup 2012」の日本大会を開催した。ビル・ゲイツの「学生達に自分のアイデアや技術を発表する場を提供したい」という思いから始まった「Imagine Cup」は、第1回目開催の2003年から数えて、2012年で10回目を迎えた。
日本大会のソフトウェアデザイン部門では、事前審査を勝ち残った4チームの中から、10分間のプレゼンテーションとQ&Aによる審査が行われ、最優秀チームが選出された。選出されたチームは、7月にオーストラリア、シドニーで開催される世界大会に挑むこととなる。
「やったー!」――最優秀チームが発表された瞬間、「Coccolo」のチームリーダー大川水緒さんは大きな喜びの声を上げた。東京工業高等専門学校による同チームは、2011年の日本大会「組み込み部門」に参加していたが、惜しくも2位という結果であった。そして、リベンジをかけた今年は、LED照明を使った自動調光システム「All Light!」で大会に臨み、見事世界大会への切符を手に入れた。
ImagineCupでは、「世界が抱える問題をITで解決しよう」という大きなテーマが基本としてあり、2006年からは、国連のミレニアム開発目標(MDGs)の8つの開発目標が応募プロジェクトの指針として提示されている。
「Coccolo」チームの自動調光システムは、「環境保護および省エネ」をテーマに考案されたものだ。商品化されていないため自分たちで開発したという「可視化通信モジュール」は、LEDライト、モジュール部品を合わせても約3500円。しかも、光の明るさを測定する可視光通信システムでは、ネットワーク構築のための工事が不要なため、低コストでの実現が可能だとチームメンバーは説明する。
このシステムでは、「シンプル調光」「節電率優先」「明るさ優先」と、3つのモードへの切り替えが用意されているほか、読書時など自席周辺の明るさを調整したい時には「Windows Phone」を用いた「ピンポイント調光」も可能となっている。
また、調光コントローラからクラウド上のストレージに節電状況が送信され、利用履歴データが記録される仕組みだ。ウェブにアクセスしてリアルタイムな節電状況や履歴を確認できるため、節電に対しての意識付けにも効果的なソリューションとなっている。
最優秀賞に選ばれた感想を大川さんは、「去年は正直悔しかったです。でも、それがバネになりました。優勝できたことが本当に嬉しい」と語った。また、「今あるソリューションを、さらに見直しをかけて世界大会に臨みたい。このまま勢いに乗りたいです」と意気込みを見せていた。
東京高専と最優秀賞を競い合ったその他の3チームの提案したソリューションの内容は次のとおり。
弓削商船高等専門学校のチームは、身近な「衣・食・住」に目を向け、発展途上国の衣服不足や伝統品保護の問題を解決する策として、誰にでも簡単に織物ができる機織(はたおり)支援システム「「Ito is wonderful!」」を提案した。機織機の各操作部分にセンサーを設置しユーザーの動作を認識させ、作業の進捗に合わせてLEDや音声ガイダンスによって適切な指示が出るシステムである。
同志社大学のチームは、視覚障害者向けに「Kinectコントローラー」を使ったウェブ閲覧支援ツールを開発した。従来数十万円かかっていた視覚障害者用のPC用ツールのコストを、Kinectシステムならば数万円で実現できると説明した。
慶應義塾大学大学院のチームは、環境保護を目的にペットボトルに代わるものとして、ICタグ内蔵のマイボトルを利用した自販システム「Dricos」を提案した。スマートフォンの普及からヒントを得て、「いつでも、どこでも、便利で楽しい体験」を考えたという。利用者の飲みたい量、コーヒーなどでは濃さ、砂糖、ミルクなどを選択でき、データが履歴として記録されるため、ユーザーの好みに合わせた案内画面が表示されるほか、イベントなどと組み合わせたマーケティングにも応用が可能となっている。
競技部門においては、昨年まであった「組み込み部門」がなくなり、「ソフトウェアデザイン部門」に一本化されたのだが、一方で、世界大会ではすでに設立されていた「ゲームデザイン部門」が、日本大会でも評価の場を得ることとなった。日本大会「ゲームデザイン部門」には次の3チームが参加した。
東京コミュニケーションアート専門学校「TEAMEXTENSION」は、視覚障害者も健常者も同じように楽しむことができるゲーム「Blind Braver」を開発した。プレーヤーがXbox 360用コントローラを使って、杖を動かしながら音の反応を手がかりに探索を進めていくアドベンチャーゲームだが、もともとは「サウンドゲーム」を考えていて思いついたという。
バンタンゲームアカデミーのチーム「Esperanza」が制作した「BlUE FIELD」は、東日本大震災をきっかけに考案されたもので、プレーヤーが自然災害後の瓦礫処理を行いながら復興を目指していくという内容の復興シミュレーションゲーム。
そして、最優秀賞を獲得したのが、トライデントコンピュータ専門学校の「チームブロッサム」による地球緑化をテーマにしたパズルゲーム「ブルーム*ブロック」だ。小さな子どもでもプレイできるように、親しみやすいキャラクターや、一筆書きをベースにしたシンプルなルールと簡単な操作方法で、視覚的に楽しめる3Dパズルとなっている。
どのチームも、実際にプレイが可能なゲームアプリを用意してきており、また、各々プロモーションビデオも制作し、披露した。なおゲームデザインの国内優勝チームは、今後世界予選の結果をもとに、世界大会への進出が決定する。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」