KDDIは4月5日、同社の3GとWi-Fiのネットワーク品質向上に向けた取り組みやエリア展開についての説明会を開催した。
まず、KDDI技術統括本部 執行役員の西山治男氏によって、3Gネットワークに関する取り組みが語られた。KDDIでは2006年度から、周波数再編に向けて新800MHz/2GHzエリアの構築を開始し、旧800MHz帯からの切り替え作業を実施してきた。全国における現在の新周波数の基地局数は、旧周波数と比べて約2.6倍、エリアカバー率も約20%増加している。
また、単純に無線基地局を増やすのではなく、3Dマップを用いたシュミレーションなどをベースにエリアを設計することで、ビルが多い都市部の路地裏などでのつながりにくい状況を改善しているという。さらに、基地局統計情報や走行データなどから通信品質の劣化場所を早期に検知し、顧客からクレームがある前に改善活動に着手していると説明する。
旧周波数は、800HMz帯のみのシングルバンドであるため、バンド間のエリア調整は不要だったが、新周波数は800HMz帯と2GHz帯のマルチバンドであるため、異なる周波数特性による干渉問題などによってデットスポットが生じてしまう。そこでKDDIでは、マルチバンドでも安定した通信品質を提供するため、2006年4月からエリア調整や端末とインフラ間のチューニングを実施。これにより都市部でも、接続率や切断率の改善が見られたという。
さらに、4月10日から基地局の混雑度合いをリアルタイムに監視し、低負荷の基地局にデータ通信先を切り替える技術「EVDO Advanced」を全国に順次導入していく。同社によれば、この技術により、従来の約1.5倍のデータ収容が可能になり、顧客の体感スループットも平均2倍に向上するという。
地下鉄駅間のエリア化も進めている。2011年12月22日から東急田園都市線の渋谷~二子玉川間、2012年3月27日から名古屋市市営地下鉄東山線の名古屋~今池間、3月30日から、東京メトロ南北線の赤羽岩淵~本駒込間と、都営新宿線の新宿~九段下間でデータ通信が可能になっている。西山氏は、地下鉄駅間に対応することで顧客の携帯電話の利用スタイルも変化すると話す。
「今は(電車が)走っている間にメールを書いて、駅に着いてから送るといったことをしているため、なかなかYouTubeを見たりということにはならない。これが連続的につながると使い方も変わってくる。そうなると、基地局の収容をどうしていかないといけないのか、トラフィックがどう変わっていくのか。そういったところにきちっと着目していかなければならない」(西山氏)
続いて、KDD技術統括本部 モバイル技術企画部 通話品質グループリーダーの大内良久氏によって、同社のWi-Fiの品質向上に向けた取り組みが語られた。3月29日時点で、公衆無線LANサービス「au Wi-Fi SPOT」は10万スポットを突破。海外でも100以上の国や地域に対応しているという。また、宅内向けのWi-Fiアクセスポイント「HOME SPOT CUBE」は35万台を突破しているという。
大内氏は、Wi-Fiにおいて高い接続率を実現するため、(1)一般的なWi-Fi基地局が対応している2.4GHz帯に加えて、干渉の少ない5GHz帯にも対応、(2)接続率や走行データ、顧客の要望などを複合的に解析し、必要とされる場所に効率よくau Wi-Fi SPOTを設置、(3)店舗全体をカバーするビームフォーミング技術を導入、(4)スポット(点)ではなく、商店街や地下街をまるごとWi-Fi化するストリートセル、の4つの対策を実施していると説明する。
また、顧客から寄せられたWi-Fiへの不満理由として、「電池の持ちが悪い」「設定や切り替えが面倒くさい」「セキュリティが不安」などが多く挙げられていると話す。まず電池の持ちについては、待ち受け時のWi-Fi信号受信間隔を最適化するアップデートを過去機種も含めて5月以降に実施。これにより、電池の持ちが約2倍になるとしている。
設定・切り替えについては、auではすでに通信状態を認識して、3GとWi-Fiを自動的に切り替える技術をAndroidスマートフォンに搭載しているが、5月以降のアップデートによって、この切り替え時間も半分以下に短縮できるという。セキュリティについても、auでは高セキュリティな暗号化方式「WPA2-PSK」を採用しているため、安心して使えると訴えた。
「KDDはマルチネットワークで1つ1つのネットワークにこだわりを持ち続けている。昔もいまもこれからも、つながるネットワークにこだわって、顧客に快適な通信環境を提供していきたい」(大内氏)
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