2011年11月に独自開発のクラウドサービス「cybozu.com」の提供を開始し、クラウド展開を本格化させているサイボウズ。2012年は一度は撤退した米国市場にも再び挑戦していく。これまでパッケージ製品の販売が中心だった同社がクラウドへシフトする狙いはどこにあるのか。サイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏に聞いた。
クラウドに徹底的に集中していこうと決めたのは2年半ほど前です。それまでもクラウドについては調査していて重要だとは思っていたのですが、そこまで全力投球はしていませんでした。2年半前に会社ごとクラウド化していこうと決めました。
導入件数はすでに600社を超えています。そのうちの8割くらいが新規顧客ですね。驚いているのは申し込み件数が想定よりもとにかく多いこと。月に100~200社も申し込んでもらえるとは思っていなかったですね。また既存の顧客が多いと思っていたのですが、新規が多いことにも驚いています。ちょうどグループウェアを導入するタイミングの顧客、もしくはクラウド版がない他社のグループウェアなどからの乗り換えとしてご利用いただいています。
思っていたよりも地方の方の利用は多いですね。最も利用者が多いのは東京ですが、地方でも結構使ってくださっていて、その比率が大体日本のGDP通りのマッピングになっています。また、規模的にいうと5~10人くらいの、会計士や税理士の事務所などでもご利用いただいています。恐らく、これまでサーバを自社で導入するのが難しかったという顧客も多いのではないでしょうか。
パッケージ製品とは競合が変わってくると思っています。いま意識しているのがグーグルとセールスフォース・ドットコム。この2社は強力に意識していかないといけないと思っています。クラウドではグローバルな戦いになってくるので、グローバルでの強者を意識して活動しています。
まずグーグルと比較すると、彼らは基本的にコンシューマを見ているため、企業向けに信頼性のある製品を提供し続けることは難しいと思っていますが、サイボウズではそれが可能です。また、セールスフォースはこれまで企業向けに継続してサービスを提供していますが、私たちは彼らよりもコラボレーションツールに特化していて、かつ価格も安いという点で差別化できると思っています。
売上はそこまで下がらないと思っています。たとえば、パッケージ版のサイボウズ Officeの50ユーザー版は20万円弱で提供しているのですが、1度売ってしまえば終わりです。一方、クラウド版だと1ユーザーあたり月500円なので、50ユーザーだと月に2万5000円の売上になります。つまり、10カ月経てば売上的には追いつけるわけです。ですので厳しいのは今年だけだと思っていて、1年間は辛抱しなければいけませんね。
私たちのできることは限られていて、いま提供しているクラウドサービスが信頼性の高いものだと認めてもらえるように安定運用することが1番大切だと思っています。やはり実績で見せていくしか顧客が安心して移行するきっかけにはならないと思います。
一方で、パッケージ製品をバージョンアップするとクラウドの問い合わせが増えるという現象も起きています。製品がバージョンアップすると、顧客は社内でバージョンアップへの対応を議論するそうです。パッケージ製品を提供し続けることで、顧客に常に選択の機会を与えることができる。私たちはどちらもバージョンアップを続けて、どんどんいい機能を入れながら改善していく。それを見ながら、顧客にどちらを使うかを選択してほしいですね。
cybozu.comフレンドはご紹介制度という位置づけです。これまでのソフトの販売方法ですと、紹介者が自ら顧客のデモや導入まで手伝わなければなりませんでした。これがクラウドになると、紹介してもらった後のフェーズは、すべてサイボウズ側でできるようになります。今後は、本当にライトにご紹介してくれるような方がパートナーになってくれるのではないかと思っています。
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