クラウドへ舵を切ったサイボウズ--青野社長「グーグルにも対抗できる」 - (page 2)

 “ファストシステム”という言葉は、ファストフードやファストファッションにならった名前です。システムにもファストフードのように、もっとライトに使えるものがあってもいいじゃないかと思うのですが、それが存在しないということがそもそもの疑問の始まりでした。


2012年1月期の決算会見での青野氏

 現場の方に話を聞くと、見た目にはこだわらなくてもいいから、いま困っていることを何とかシステム化したいと。でもそれを自社の情報システム部門に言っても、開発に数カ月かかると言われてしまう。そこを埋めることができるのがファストシステムだと思っています。既存のものを強引に置き換えようということではなく、いま満たされていないシステムニーズが山ほどあって、そこを新たな提案で切り開いていけるのではないかと思っています。

 またkintoneで顧客層の裾野を広げるられると思っています。まだIT化されていない業界はたくさんありますが、kintoneはすでに結婚式場や介護、農業の業者などにも利用されています。そこはこれまで、金額が見合わずなかなかシステム提案ができなかった領域だと思います。ところがkintoneであれば月5000円で作れて簡単にIT化できる。これがファストシステムが作りたい世界観なんです。

--3月7日に開催されたカンファレンスでは、新たなPaaS「CyDE-P」の構想についても語っていましたが、改めてどのようなサービスなのか教えていただけますか。

 シンプルに言えば、cybozu.com上でPHPのデータベースアプリを作ることができるというものです。サイボウズで提供しているのは、日常業務の効率化のためのグループウェアと、kintoneのような顧客の業務に合わせてカスタマイズできるツールなのですが、多分それ以外にも顧客にニーズがあるだろうと思っています。

 実際、サイボウズ社内では工数管理システムを自社開発しているのですが、いまこれを顧客がcybozu.com上で買うことはできません。ですので、顧客のニーズに合わせて個別のソフトを開発する環境も必要になってくるだろうと。本当に顧客が「このシステムだけはお金をかけて作りたい」というところも、ちゃんとcybozu.com上で用意しないといけないと思っています。

 cybozu.com上で開発するメリットは何かというと、自社でサーバやソフトを買ったり、バックアップをとるといったことを、すべてサイボウズに丸投げできることです。アプリを作るだけでcybozu.com上でシームレスに使うことができる。これができると大抵の顧客のニーズには応えられると思っています。リリース時期については年内には出したいと思っています。


「CyDE-P」の提供イメージ

--2012年は米国を中心に海外展開も進めていくそうですが、なぜこのタイミングなのでしょうか。

 海外展開するための条件が揃ってきたということです。まずサイボウズの開発力や提供力、資金力が以前と比べて上がっています。2005年に撤退した際は、資金面が厳しかったこともありましたが、いまのサイボウズでは資金的には余裕があり、米国で異なるニーズが上がってきたとしても、それを受けられるだけの開発体制が整っています。また以前は米国の競合と比較しても、正直なところそこまで勝っていると思えなかったのですが、いまはcybozu.comで使っているクラウドのインフラだったり、セキュリティへの考え方についても、グーグルやセールスフォースに対抗できると思っています。

 顧客の状況も変わってきています。私たちが進出した10年前(2001年)は、米国にウェブのコラボレーションツールというものはほとんどありませんでした。メールや添付資料、社内のファイル共有があるくらいです。それが、米国でのワークスタイルもどんどん変わってきていて、現在は社内のウェブベースのコラボレーションソフトが注目を浴びていて、彼ら自身も価値観を変えようとしている。これは私たちのようなウェブコラボレーションベンダーにとってはすごく追い風だと思っています。これらの要素が揃ったことが、再び米国へ行こうと思っている理由ですね。

--スマートフォンへの対応状況なども教えてください。

 スマートフォンアプリの「サイボウズ KUNAI」で、スケジュール、メッセージ、ワークフロー、メール、掲示板など、ほとんどの機能を利用できます。いま私たちの開発の方針は“モバイルファースト”で、PCから設計するのではなく、モバイルで快適に使えることを前提に開発を進めています。cybozu.comを導入していただいた顧客にアンケートをしてみると、クラウドを選んだ最も大きな理由がモバイルでの利用でした。ですので、現在は丸1日スマートフォンからしか使わないという人も想定して開発しています。

--最後に読者に向けたメッセージをいただけますか。

 2012年はクラウドに集中しようと思っています。パッケージ製品をやめるわけではありませんが、今後はクラウド版を先に開発し、販売もクラウドを中心にしていきたいと思います。ですので既存の顧客も安心してクラウドに移ってきていただければと思います。

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