グリーは3月23日、開発者向けカンファレンス「GREE Platform Conference 2012」を開催した。カンファレンスの冒頭には、グリー代表取締役社長の田中良和氏が登壇。世界展開を進める同社の動向を語った。
田中氏はこの1年を振り返り、「スマートフォンの普及」がもっとも大きな変化だったと語る。「振り返れば『スマートフォンが流行するのか』という(話題があった)のがうそのよう。我々も対応が急務と思った」(田中氏)。同氏の説明によると、すでにGREEのユーザーは2~3割がスマートフォンにシフトしており、今後1年以内にもユーザーの半数まで拡大する見込みだという。
先進国だけでなく、新興国でも広がるスマートフォンユーザー。一部の調査では、2012年に世界で約6億5000万台の出荷台数とも言われている。また、スペックに関しても、2013年には現在の家庭用ゲーム機の性能を追い越す可能性があるという調査結果がある。
田中氏はこういった背景をもとに、「かつて日本のケータイはビジネスモデルを日本以外に展開することが難しかった。しかしスマートフォンで全世界統一の仕様になっていく中、日本で培ったビジネスモデルを世界に展開できるいい機会になった」と語る。
グリーではすでに世界9拠点に展開しており、そのうち5カ所でソーシャルゲームの開発に取り組んでいる。3月には米国拠点でスタジオ開発のゲーム、「Zombie Jombie」をiPhoneアプリとして公開。同ゲームは米国のApp Storeで最高4位にランキングし、パナマとジャマイカでは1位になった。「グローバルでビジネスしていく中で、『日本で培った考え方を日本以外でも受け入れられるのか』と質問を頂くが、意気込みでなく結果として『できた』と話していきたい。これは始まりではあるが、少なくとも米国という最大のマーケットで受け入れられるのではないかという自信になった」(田中氏)
Zombie Jombieに関しては、デザインなども米国を意識して作られているが、今後は米国以外の拠点が作ったゲームに関しても、順次米国でリリースしていくという。「試行錯誤の中にはあるが、少なくとも成果を残せた。あとは個別のゲーム単位でどう上手くやっていくかが主眼になっていく。『世界(のゲーム)と競合できないのではないか』ということには、『一切ない』と思える」(田中氏)
グリーではまた、コンソール機レベルの品質のゲームも提供する予定だという。田中氏からはレースゲームの「GREEレース(仮)」、ペットとのコミュニケーションができる「ともだち★ドッグス」といった開発中タイトルが紹介された。
そのほか、これまでエンターブレインから不定期に発売していたソーシャルゲーム専門誌「ファミ通GREE」を6月末より月刊化することも明らかにした。今後は同誌を通じてゲームの開発者を紹介する場を作り、「ゲーム産業が若い人を中心に『かっこいい産業』であるという、いいイメージを作っていくことが重要。メディアを通じて発信していきたい」(田中氏)
そのほか、世界展開に向けた直近の動向として、PayPal決済に対応したことや、レベルファイブや仏Ubisoft Entertainment、gameloftなど国内外のコンテンツプロバイダとの提携についても改めて説明。さらには6月に世界最大規模のゲーム展示会「Electronic Entertainment Expo(E3)」へ出展することを説明。「これからはグローバルなイベントにも積極的に紹介していく。日本の開発会社のコンテンツを世界に売り込んでいく」(田中氏)とした。
直近にはソーシャルゲーム「探検ドリランド」のカード不正複製バグに端を発する騒動から、監視体制を強化すると発表していた同社。ここでも新たに利用環境向上に向けて、6つの取り組みを行うと説明した。取り組みの内容は以下の通り。
これらの取り組みは、当然同社だけではなく、パートナーにも影響のある内容だ。田中氏は「さまざまな会社にご迷惑をかけるところもあるが、スピーディーな対応が重要。積極的にやっていく。この業界において、大きなゲームを提供している会社という自覚を持って、自らアクションを起こしていくべき」とした上で、「一部のパートナーに影響があるかもしれないが、短期的な売上の増減が目的ではない。協力して欲しい」と呼びかけた。
プラットフォーム事業者6社での連絡協議会への参加を表明している同社だが、田中氏はまずはGREE Platformの適正化に注力するという。「ほかの会社に対してどう、業界に対してどう、ということを考える前に『できることをやる』ということが重要。(グリーは)日本のソーシャルゲーム業界のリーダーシップを取っていく立場になりたいと思っているし、そうならなければ(ならない)と思っている。我々だけでなくさまざまな会社を巻き込みながら取り組んでいく」(田中氏)
最後に田中氏はグリーの目標について、10億人が利用するサービスを作ることだと語った。「今はないと思うが、FacebookやTwitterなどさまざまなサービスは、数年以内に10億人が使うようになる。GREE Platformもそんなサービスの1つにしていきたい」(田中氏)。加えて、この数字を設定した理由について「スマートフォンのゲームビジネスになる中、今まで『ゲームをやりたいと思っていてもお金がない』という人も多くいたと思う。このビジネスの使命として、そんな人にもゲームを提供していきたい。そんな思いを込めた」とした。
最後に田中氏は、改めて利用環境向上に向けた取り組みにふれ、「(ソーシャルゲームを)日本の産業としてもより大きくしていきたいのは個人的な夢でもあり目標。そのためには、まず日本で社会に受け入れられるようにしていくのは重要。(パートナーなどに)さまざまなご負担をおかけする部分はあるが、日本で代表される産業に育てていきたい」と語った。
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