コワーキングスペースを通じたフリーランスやスタートアップの「新しい働き方」について取材を続けてきた本連載。しかし、新しい働き方が求められるのは企業も同様だ。今回は、40年以上前から働き方を含めたオフィス提案を続けるコクヨに、“企業が取り組む新しい働き方”について聞いた。
コクヨの歴史は1905年にまでさかのぼる。創業者である黒田善太郎氏が和式帳簿の表紙を製造する「黒田表紙店」を開業したのがはじまりだ。当時はまだ少なかった伝票や便せん、複写簿などの紙製品の製造を主とした事業を展開していた。1960年になると、ファイリングキャビネットの販売を開始。その後デスクや机、収納庫などのオフィス家具も手がけるようになる。
現在では、持ち株会社としてのホールディングス形態をとり、コクヨS&Tを中心としたステーショナリー事業、コクヨファニチャーを中心としたファニチャー関連事業の2つの柱で事業を展開。文具からオフィス家具までのハードを提供することに加えて、さまざまな働き方に対応した環境づくりや、オフィスのトータルコーディネートやゾーニング、コンサルティング事業など、空間価値の提供にも取り組んでいる。
オフィスのハード面を事業の中心とする一方で、企業の環境課題対策についても研究をしてきた。「世の中の多くが環境対策やエコに対する意識が高まる前から、環境に対するテーマを掲げてきた」――コクヨ チーフビジネスプランナーの万木(ゆるぎ)康史氏はこう語る。万木氏が所属するRDIセンターは、環境に配慮したオフィス作りやこれからのオフィスのあり方についての研究開発を行う部署だ。
「包装材や梱包材、配送の途中などのロジスティクス部門でいかにCO2をださないか? そうした環境に対策した商品について研究している。企業経営の中で環境にどれだけ対応していくか、見える形で提供していかなくてはいけない」(万木氏)
一方でコクヨでは、1969年の大阪本社竣工時から「ライブオフィス」というオフィスのあり方を提案している。ライブオフィスとは、自らが開発した製品をオフィスで自ら利用し、その様子を「ショールーム」として社外の人たちに展示する――まさに自らが働いている様子をそのまま商品説明にする考えだ。
もちろん、社内には製品のショールームコーナーも設けているが、それとは別に社外の人たちに自身のオフィスを案内し、どのように製品を使っているか生の様子を伝え、そこから自らが働き方について提案していく。「ただ商品を売るだけではなく、オフィスのあり方を実践し、提案していくことに意味があると考えてきた」(万木氏)
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