すべてが明らかになるまで、どうしたらAppleや開発者、あるいは米連邦議会が正しいことをすると信じられるというのだろうか。
歌舞伎が好きな人なら、シリコンバレーとワシントンの人々が繰り広げる、定型化された最新のドラマを面白いと感じるはずだ。
連邦議会はついに目を覚まし、ユーザーのプライバシーについてAppleからの回答を要求した。Appleは、悪質なアプリメーカーが開発ガイドラインを無視してユーザーの連絡先データを収集していると、型どおりに非難している。つまりそういうことだ。
その間に立たされているユーザーは当然、誰かが自分たちの利益を本気で優先してくれているのか、それとも定期的につけ込めるだまされやすい人(金のため、あるいは票のために)だと思われているのかと疑問を抱いている。われわれは、今後のプライバシーをめぐる無意味な活動からそれほど遠くないところにいる。X社やY社、Z社など、越えてはならない一線を何とか越えては、許しを請う会社が出てくるだろう。全くの偶然だが、米国時間2月15日は、Kevin Mitnick氏が逮捕されて、コンピュータのプライバシーやセキュリティの問題が広く注目されるようになった日から20年目にあたる。名前やテクノロジは変わったが、われわれは数十年たった今でもこの問題を議論している。その成果として出てきたのは、その場しのぎの解決策だけだ。
今回のプライバシーをめぐる混乱の中心となっているのは、Appleの「iOS」向けに記述された一部のスマートフォン用アプリが、事前の許可を受けずにユーザーの連絡先リストを収集していたことだ。これが一部に限られたことだと分かったとしても、アプリ開発者や、その開発者の製品をApp StoreでホストしているAppleの評判にはやはり大きな打撃となる。数多くのアプリを作成してきた開発者のDave Zohrob氏は、多くの開発者が現在、消費者に知られずにアドレス帳データにアクセスしていると述べた。そうしたケースの99%では、ユーザーは全く気づかないだろうと同氏は言う。
「ユーザーは、開発者がデータにアクセスしていることに気づかないし、自分の連絡先情報で彼らが何をするのかについても全く分かっていない」(Zohrob氏)
ここで前提になっているのは、開発者がユーザーの情報で何も悪いことをしないということだ。筆者の同僚のRafe Needleman記者は、インスタントメッセージングアプリのKikが当初、アドレス帳の情報を吸い上げていたことについて、詳しい記事を書いている。Kikが情報を取得していたのは、それがこのアプリの優れた機能だと思っていたからだという。Kikは、一部ユーザーからの苦情を受けて、アプリを修正している。これは重要な点だ。これらはソーシャルアプリであり、可能な限りソーシャルにするというのがそうしたアプリの基本的な考え方だ。Kikに自分のアドレス帳から情報を収集する許可を与えなければ、情報をすべて手入力する必要が出てくる。そこはトレードオフだ。
しかし、特に被害を受ける可能性を考えれば、ユーザーは許可を与えないよう決断するべきだろう。データは自分のものであり、また、誰かが家族や友人の電話番号や電子メールアドレス、実際の住所などを使って、いかがわしいことをしようとするかもしれない。サーバが絶対に不正侵入されないということもない。
ここに来て、ワシントンの議員たちが話に入ってこようとしている。彼らはシリコンバレーから十分な資金を取っている。その見返りとして、目的にかなったルールを策定して、自分ではどうしていいか分からない人々のためにそのルールをはっきりと説明するくらいのことはできる。大統領選挙が近づいていることから、これは新たな宣伝材料になりつつある。どうなるか楽しみだ。
こういったことがすべて解決するまで、彼らを信用するユーザーはどのくらいいるだろうか。ユーザーへのメッセージは非常にシンプルだ。当面の間は、自分で何とかするしかない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」