アップルのサプライチェーン--契約メーカー労働環境の真の課題 - (page 2)

Larry Dignan (ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル2012年02月01日 07時30分

 これはテクノロジ分野だけの問題ではない。テクノロジがこの議論で標的になっているのは、魅力的な分野だからだ。自分が着ている服もほとんどが外国産である理由を気にしたことはあるだろうか。われわれはWal-MartやTargetなどに行って安価でしゃれたものを求めるが、安価な労働力がなければ、安く買うことはできない。ファッション業界では中国以外の調達先を見つける競争が始まっている。なぜか。人件費が高騰しているからだ。現時点で有望なのはアフリカである。あなたが着ているそのシャツの生産には、何らかの搾取労働が関わっているかもしれない。実際のところ、われわれの所有物を生産したサプライチェーンは、われわれが知りたくないことをいくつか抱えているのだろう。NYTの記事のAppleは、米国のほとんどの大企業と置き換えることが可能なはずだ。

 米国は安価なものを求めている。理論的には、企業に米国内での製造と採算が取れるだけの値付けを可能にさせる「バイアメリカン」運動が起きるはずだ。第一に、バイアメリカン運動がうまくいったことはなかった。米国にあるすべての機関は、価格が低水準に抑えられることによって成立している。そのためには、可能な限り安い労働力を見つけることが必要だ。米政府について考えてみよう。米政府は、世界中のどの紙幣偽造犯よりもうまくお金を印刷している。この危うい仕組み全体が、米ドルが準備通貨であることによって成立している。突然すべてを米国内で生産するようになれば、天井知らずのインフレが発生するだろう。政治家たちは米国内の生産増強について語るが、紙幣を刷るという彼らの大計画は安価な製品に依存している。それがなくなれば、米国は第一次世界大戦後のドイツのように、価値のない通貨を大量に持つことになるだろう。

 さらに、サプライチェーンの酷使に対するこれらの意見は、すべて西洋のレンズを通して見た考え方だという現実がある。Foxconnの工場で働く人にとって、自分のしていることは家族と将来の世代を養うことだ。その人にとって、同工場の給料はおそらく非常に高いのだろう。その子や孫の世代の人々はFoxconnの経営陣に加わるかもしれない。アフリカの織物工場で働く人や新興市場のすべての人にも同じことが言える。

 筆者が言いたいのは、多くの欠点を持つサプライチェーンを存続させているのはわれわれだということだ。われわれはそれらの欠点を検証したいと考えているが、実際のところその気持ちはそれほど強くない。作業員の安全に関するこの騒動の中心的な問題はAppleでも、テクノロジ業界でも、そのほかの垂直業界でもない。われわれなのだ。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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