モジラが重視する“ものづくり”視点--未来のウェブ創造をユーザーと思案

別井貴志 (編集部)2012年01月06日 12時16分

 Mozilla Japanは1月21から22日の2日間、「Mozilla Vision 2012」を開催する。ウェブ開発者や技術者のみならず、ものづくりに携わるクリエーターや教育関係者、親子にも参加してもらおうとしている。そして、“オープン”に関心を持つ人々と一緒に真のオープンとは何かを考え、体験、創造するイベントと位置づけている。

 600人を超える参加人数を見込んでおり、こうした規模であるうえに技術者のみではなく幅広い人に参加してもらうようなイベントの開催を試みるのは、おそらくMozilla Japan始まって以来のことだろう。このイベント開催の狙いや想いなどについて、Mozilla Japan 代表の瀧田佐登子氏に聞いた。

--イベント開催のきっかけは?

 世界中でインターネットをみんなが使うようになった中で、ウェブが今後どういうふうに人びとのライフスタイルに入っていくのかといったこと、どういう位置づけになるのかというところをずっと考えてきました。そこで、今まで私たちはブラウザというところで走り続けてきたので、一度原点に立ち戻ってみようと思ったのです。

 私たちの組織はMozilla Foundationの公式支部でもあるということで、Foundationとプロダクトという面で、Mozillaがいままでどういうことをやってきたかというのを振り返りつつ、これからのウェブやインターネットがどうあるべきかを、いろいろな人が集まって考えるイベントをやってみようというのがそもそもでした。ただし、技術者だけじゃなく、これから世の中を変えていくのはユーザーだよね、ということで、さまざまな人に参加してもらいたいのです。

 そのなかでも、人をどう育てるかというのはテーマの1つにしています。これまでウェブの技術を革新してきたり、ウェブ業界をリードしてきたりするような人をどう育てていくかという技術者育成の面だけではなく、私自身も子どもを育てていて、さまざまな疑問を持つことがあるので、もっと広い意味で次の世代の人材をどうリードしていくかという切り口です。

--教育にもフォーカスするということですか。

Mozilla Japan 代表の瀧田佐登子氏 Mozilla Japan 代表の瀧田佐登子氏

 “教育”といってしまうと大げさで堅い感じになってしまうので、あまり使いたくないのですが、2011年に米国に行ったときに、たまたまオープンエデュケーションの展開を見てきました。Foundationでは、これまで「Mozilla Drumbeat」というサイトを開設して、いろいろなプロジェクトを展開してきました。オープンコースウェアなど、海外の教育者の方々はインターネットが発展してウェブが主流になったいま、ウェブを通じて何かを教えようとするときに、どうも一方通行のやり方になっているようにも感じていました。

 しかし、オープンエデュケーションの展開では、子どもたちから何かを創りあげるような教育システムの取り組みをトライ&エラーで、いろんな方向から探っていたというのがあって感銘を受けました。旧スタイルのeラーニングなど、日本もこうしたコンテンツは既にたくさんありますが、インターネットが発達することになって、こうしたコンテンツが自由に使えるようになって、いまのままで本当にいいのかというのを私自身思っていたのです。

 古きよきものを、どうやってより活用できるようにしていくかということが重要だと思います。いまインターネットの情報は溢れるばかりに、膨大にある状態で、今後それをどう本格的に活用していくかという段階に入っているのではないでしょうか。そして、それは技術者が考えることなのか、と思ったときに、それは違うでしょうと。技術とは別の視点から、実際に使う人がどういうものが欲しいのか発信しなければならないし、使う人に言ってもらわなければわからないし、使ってもらわなければわからないことです。技術者だけでは従来どおりのものしか作れないし、いいものは作れないと思います。ものづくりもこうしたユーザー視点から切り込んでみようということで、ミートアップできる場を作りましょうという話になったのです。

--2日間にわたって開催されますが、どのような内容に?

 Mozilla Vision 2012の1日目は「Conference Day」です。午前中は、ものづくりという面でロボットクリエーターの高橋智隆さんをゲストに招いて、私と慶應義塾大学の村井純さんとトークセッションを行います。

 私が10数年間ブラウザに携わってきた中でFirefoxをリリースしましたが、Firefoxは「ユーザーが何を求めているのか」というのを、技術者が問いかけたところからものづくりが始まったという経緯があります。ユーザーが夢を描いて欲しいよねと。

 少し話はそれますが、私たちは子どもの時に鉄腕アトムを見て育って、2000何年はすごい未来のような気がしていて、こういう風になっていたらいいなと思ってたし、技術者はたぶんこういうものを作ったらおもしろいと思っていたでしょう。それが、実際に2012年になって、鉄腕アトムの世界とあまり離れていなかったな、という時代の状況になったというのも、きっと鉄腕アトムを見た世代の技術者が作ったんだな、というのを私はいろいろな講演でよく話してきました。これと同じような話を高橋さんがロボットを作った経緯でおっしゃっていたので、ぜひ話してみたいなと(笑)。

 ものづくりの視点は、「夢を現実に」というのがすごく重要だと思うし、私たちもたかがブラウザかもしれないけれども、ブラウザだってやることがいっぱいあるし、こうした視点をもって取り組んでいきます。

 Mozillaというのは、組織のようで組織じゃない面があります。ユーザーと技術者といろんな人がいて、その人達が考えることによっていろんなものが生まれてくるという場でもあります。次の世代にどういう世界を描いていくべきなのかを、競合するような企業とも一緒になってみんなで考えていかなくてはならないと思っています。そういう意味で、Mozilla Visionというイベントを通じていろんな人をつなげたいという意識もあります。刺激と革新と共に。

 1日目の午後は、未来のテクノロジーという形で、Mozillaに特化しているわけではなく、HTML5などウェブのスタンダードを世界的にリードしているメンバーがウェブの技術などの話をします。モバイルに関してMozillaは後発という面もありますが、後発だけにこのまま進んでいいのかという部分を技術面、市場面、ウェブアプリケーション面から、みんながハッピーになるような環境はどういう環境になるのか、オープンな技術を使いながらMozillaなりの考えを提示していくつもりです。モバイル向けOSプロジェクト「Boot to Gecko」を、1つのアイデア提示として新しい技術や問題提起をしていきたいです。

--ネットやウェブのさらなる進化に、ユーザー視点のものづくりが重要だという点で、今後どのような世界になると思いますか。

 私が考えているのは、きっとブラウザもネットもユーザーが意識しないで自然と使っていたという状況にどんどんなっていくと思います。リアルとバーチャルの境界線がどんどん薄くなる状況とも言えるでしょう。リアルな世界とバーチャルな世界をどうつなげていくのかという点を、いままではブラウザがつないでいた面がありますが、たとえば(白物)家電とネット、ウェブをどうするかなんていう点も、技術者だけが考えちゃだめで、主婦も参加して作っていかないといいものはできないでしょう。

--イベント2日目はワークショップですね。短時間にいろいろ体験できるプログラムが用意されているようですが。

 2日目のワークショップは事前登録なしです。直接、遊び行く感覚で来ていただきたいです。お子さんにも楽しんでいただけると思います。世界で展開している「Hackasaurus」(ハッカザウルス)というイベントは、楽しみながら、子ども達同士で学んでいくというスタイルでやっていますが、日本ではまだやったことがなかったので今回初めて開催します。たとえば、ウェブをハックしよう! ということで、自分がハックしたウェブサイトにマウスオーバーするとレントゲン写真のように見せられるツール(ブックマークレット)を使ってウェブの構造を見て体験できます。このほか、CanvasやSVGアニメーションといった標準技術を使ったパラパラアニメを、スマートフォンやタブレットで描いて作るといったことをやります。

 いまの子ども達はゲーム感覚でお互い教えあいながら高め合っていくので、やはりこういう感覚で取りむんでいくことが大切だと思います。これは、1日目のパネルディスカッション「パネルディスカッション 金の卵を育てよう! ? 未来のエデュケーションスタイルを考える」でも、オープンコースウェアからオープンエデュケーションという取り組みをしている人たちとともに、新しい教育スタイルを構築していけるかということをテーマにしています。

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