グリーは11月2日、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)となる「グリーベンチャーズ」の設立を発表した。また、グリーベンチャーズを運営主体として、グローバルでインターネットビジネスへの投資を行うGV-I投資事業組合を組成する。
グリーはこれまで、Androidに特化したファンド「A-Fund」への出資などは行っていたが、コーポレートベンチャーキャピタル形式で自社のファンドを組成するのは初めてだ。1号となるファンドはグリー100%で規模は20億円程度、アーリーステージのIT系スタートアップが対象となる。
ファンド運用の実務担当者となる堤達生氏は、独立系VCやサイバーエージェント・ベンチャーズの前身となる金融事業立上げを経験後、リクルートのベンチャーキャピタル投資部門の責任者を経てグリーベンチャーズに参加する、若手ベンチャーキャピタリストの1人だ。
グリーの最近の国内出資、買収案件については、1月のアトランティスの子会社化、9月の有価証券報告書に記載されているgumiや東京芸者エンターテインメントなどのサービスアプリケーションプロバイダへの出資、日本以外ではmig33への出資やOpenFeintの完全子会社化など、成長を象徴する事案が並ぶ。
CVCとなるグリーベンチャーズは、当然これらのシナジーを最大化させるものになると思いきや、堤氏から返ってきた答えは「本体とのシナジーは特に意識しない」という意外なものだった。 「ベンチャーキャピタル事業にはCEO田中の強い意向があった。独立したファイナンシャルインベスターとして成長しそうな会社に投資をしてリターンを得ることが目的」(堤氏)と設立の狙いを話す。
「ターゲットはエマージングマーケットとしてのアジア。投資を通じて新しい技術、マーケットを開拓することも目的の1つ。ただそれだけで終わらせず、しっかりリターンも狙う」。投資対象も「ゲーム(だけ)ではなく幅広く、数年後の成長株を探したい」とグリー本体の投資事業との違いを明確にするつもりだ。
投資対象を起業したばかりのスタートアップ企業に対してなされる「シリーズA」に定めているのも大きな特徴だ。投資額は日本国内で1案件あたり5000万円から2億円ほど、アジア圏では特に注目しているというインドネシア方面で3000万円から1億円ほどの規模を考えているという。
確かに「日本版Y Combinator」となるOpen Network Labが2010年に設立されて以来、2011年に入ってからもシード・アクセラレーターや個人投資家などの活動が活発化している。これらのプレーヤーが数百万円ほど投資したスタートアップはそろそろ次のステップを求める頃だろう。
堤氏が思い描くのはアジアのエコシステムの姿だ。彼は仕組みづくりに大切なこととして「人材」と「ストーリー」を挙げる。例えばシリコンバレーだとCOO(最高執行責任者)がいないという場合でも「じゃあ、あそこの会社から持ってこよう、そういうことができる。これが日本やアジアでは難しい」(堤氏)。加えて「失敗した会社の、しかし経験豊富な人材を次につないでいく、そういうこともベンチャーキャピタリストとして重要な役割」と続けた。
またもう1つ「イグジットまでのストーリーをどう作るか。この会社だったらどこが買ってくれるか」--このような個々のストーリーを日本だけでなくフォーカスしているインドネシア、その他のアジア圏の国々で作り出すことも重要と語ってくれた。
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