デジタルマーケティングの最新トレンドの情報や意見交換のために、国内外のマーケターが集うカンファレンス「ad:tech Tokyo 2011」。10月28日は、マイクロソフトのグローバル クリエイティブ ソリューションズ部門のゼネラルマネージャーであるスティーブン・キム氏による「ジャーニー・オブ・ストーリーテリング ~ テクノロジーによって変革するブランドとコンシューマーとの関係~」と題した基調講演が行われた。
ブランド広告においてストーリーテリングがもっとも重要だと語るキム氏。マイクロソフトでは、特にストーリーテリングの中に消費者が参加できることを最重視しているという。「我々はテクノロジーをただテクノロジーとして捉えるのではなく、テクノロジーを通じてブランドのストーリーを伝えていくことに情熱を持っている」とキム氏。
その一例としてキム氏が紹介したのは、Facebookで展開したブランド広告キャンペーン。その1つがトヨタのレクサスのキャンペーンだ。キャンペーンでは、それまでの典型的なユーザー層ではなく、高所得者層ではない若年層をターゲットとして設定。Facebookから抽出した住所や友人の数などのデータをもとに抽象的なアート作品が作れるアプリケーションを提供し、ユニークな体験を友人と共有したい、語り合いたいという欲求が強いユーザー層にリーチし、ブランドの認知効果につながったという。
また、au(KDDI)の「Windows Phone」のキャンペーンでは、Facebookのプロフィール写真をもとにオリジナルの広告を作れるというキャンペーンを展開して反響を呼び、キム氏は「人々とエンゲージメントを持つということは非常に重要なこと。ストーリーテリングの素晴らしい効果を持つことができたキャンペーンだった」と振り返った。
また、2010年に北京で行なわれた絵画展では、ユーザーが撮影し、投稿した4000点の写真を使ってイメージをビジュアル化するコンテンツを試みたという。キム氏は「コンテンツやテキストの進化を考えると、ストーリーテリングというのは、ブラウザー上で文字を読んだり動画を見るというだけのものではない。また、高度な技術でなくても、消費者と環境とのやり取りのしかたを解放することで新しい体験を提供できる。ユーザーの側がメディアやストーリーテリングを与えるというような、民主化されたアプローチの仕方もある」と語った。
一方、そのようなユーザーとブランドのインタラクションにおいて、マイクロソフトが今後の軸と考えているデバイスが“Kinect”だ。今春発表した“アバターKinect”は、仮想ルームで最大8人とアバターを使ってチャットができるサービスで、モーションキャプチャー技術により、プレイヤーの身振り手振りだけではなく、顔の表情までアバターに反映させることが可能だ。キム氏は「ビデオカメラのビデオ会議だと、自分の顔を見せたくないという人などユーザーにとって不都合な場面もある。人々が現実の世界よりもいいものを見せたいと思うのは自然な気持ちで、アバターを通じてならそれが快適にできるということに気付いた」と意義を説明した。
さらに、近い将来発表を予定しているという“New Earth”を紹介。Kinectの技術を使い広告と対話ができるというもので、声に反応して広告のダイアログが開き、そこから地図が表示されたり、販売店の情報などのメッセージが携帯電話に届くというソリューションだ。「これにより、ユーザーはただ単にテレビの前に座って見ているのではなく、本当の意味でのエンゲージメントを複数のプラットフォームの前で行使することができる」とキム氏。「ブランド広告のストーリーテリングにテクノロジーをどう活用できるか。そして、ストーリーテーリングがブランドの価値をどう語ることができるか。また、広告をさまざまなかたちで結びつけることによって、顧客にも応えていける」と、変革を続けるテクノロジーを介した、ブランドとコンシューマーとの関係性のあり方についての見解を語った。
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