10月28日から29日にかけて都内で開催されたマーケティング担当者向けイベント「ad:tech Tokyo 2010」。29日の基調講演には、Microsoftグローバルアドバタイジングセールス/トレードマーケティング担当のコーポレートバイスプレジデントであるCarolyn Everson氏が登壇。コンピュータ技術の進化と広告表現の関わりについて語った。
Everson氏は広告において重要なのは、コンテンツ、クリエイティビティ、ユーザーインターフェースの3点だと主張する。「消費者はクリエイティビティを重要視している。広告提供者は従来の枠をどう越えてユーザーインターフェースを付け加えられるか、クリエイティビティを打ち出せるかがポイントになる」(Everson氏)
インターネットが普及し、検索が当たり前になることで消費者の情報アクセス行動が大きく変わった。誰もが検索サイトにアクセスし、価格を比較したり、ユーザーレビューを読んでから買い物をするようになっている。
テレビとPC、モバイルで同じ広告が展開されても、それぞれのデバイスによってユーザーの見方は変わってくる。たとえば自動車を買いたいと思ったとき、モバイルでは地元のディーラーがどこにあるか検索するが、PCでは自動車の色を変えるなどカスタマイズ機能を求める。単に「テレビ広告がPCやモバイルで見られる」というだけでは不十分なのだ。
ユーザーがコンテンツにアクセスする上で、より自然な操作感、ナチュラルインターフェースが重要な技術となる。ここで日本では11月20日に発売されるXboxの新インターフェース「Kinect」が紹介された。KinectはXboxに接続し、プレーヤーの動作、ジェスチャー、音声などを認識してゲームを操作できるオプション。「Kinectでコントローラーが不要になり、より自然な操作が可能になる」(Everson氏)と、Kinectのもたらす新しいユーザーインターフェエイスへの期待を述べた。
基調講演の後半ではイノベーション/デザイン人類学者であるAnnna Kirah氏、日本コカ・コーラのマーケティング&ニュービジネスインターラクティブ・マーケティング統括部長である江端浩人氏、ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングのバイスプレジデント・マーケティングである三澤久男氏をステージに招き、テクノロジーとマーケティングについてパネルディスカッションを繰り広げた。
Kirah氏は消費者と技術の関係について、「消費者は新しいテクノロジーを恐れているだろうか」と問いかけた上で、自ら「消費者はテクノロジーを自動車のようなものだと思っている。原理や構造は知らないけれども、走り出せば無事に動いて欲しい存在」と語る。
江端氏はマーケティングの展開において「アーンドメディア(Earned Media:評価を得られるメディア)」「オウンドメディア(Owned Media:自社メディア)」「ペイドメディア(Paid Media:有料メディア)」の3種類をいかに効率よく使っていくかが重要だと述べた。
同社ではアーンドメディアとしてソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、オウンドメディアとしてのコカ・コーラ パークに加えてペイドメディアを出し、3つのメディアをリンクさせて使っていくという。三澤氏も、マーケティングの基本に立ち返えれば、コンテンツの認知度を上げていくには3つのメディアをすべて考えなければいけないと述べた。
続いてEverson氏からは、PCとモバイルをどう切り分けるのかという問いかけがあった。
江端氏によると、コカ・コーラではPCサイトもモバイルサイトも、基本的に同じ内容を提供し、同じ体験を共有できるという。「どこにいても、同じブランド体験ができることが重要」(江端氏)
三澤氏はPCとモバイルではリアルタイム性が大きく変わると指摘する。モバイルではTwitterなどを使ったよりリアルタイムな情報交換を欲している。
Kirah氏はある調査で、「日本ではケータイでテレビ番組を見ている女性が多かった」という結果が出たことに強い印象を受けたという。広告業界では、家のテレビで見ていることを前提にテレビ広告を作っているわけだが、ケータイでテレビ番組を見ている人が増えれば訴求効果も変わってくる。技術によって生活が大きく変わる。消費者が意思決定する場面に技術がかかわっていることを考えなければいけないという。
最後にEverson氏は「なによりも消費者が重要であり、マーケティングは消費者との対話が大事であることを理解しなければいけないだろう。広告表現はクリエイティビティとテクノロジーが一緒になり、実現できるものを目指さなければならない」と締めくくった。
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