--現在のAppleで大きな注目を集めているのはTim Cook氏です。あなたとJobs氏との会話に基づいて、2人の関係はどのようなものなのでしょうか。
Isaacson氏:2人は互いを称賛しています。本の中で、SteveはTimについて雄弁に語っており、Appleにとって何が大切かを理解しているという点で、Timを信頼できたのです。
わたしがSteveに聞いた重要な質問は、自分が生み出したもので何が最高か、というものです。「iPad」という答えを予想していましたが、Steveは「Appleという企業」だと言いました。偉大な製品作りは創造性が育まれる場所でのみ可能となるもので、ガレージの中にいるだけでは不可能だとSteveは言います。Jony Ive氏、Tim Cook氏、Eddy Cue氏、Phil Schiller氏、Scott Forstall氏とチームを組む。みな、忠誠心の強いチームをまとめ上げ、Appleの遺伝子を注ぎこみ、Steveが遺す創造性とテクノロジを融合させる能力を持っています。だからこそ、新本社の建設はSteveにとって非常に重要だったのです。新本社は、革新的で永続的な企業を創造するSteveの能力を物理的に表現したものなのでしょう。
--Jobs氏とGates氏、Jobs氏とIve氏、Jobs氏とSchmidt氏の話を聞くのは楽しいものです。Jobs氏がテクノロジ仲間とCEO仲間の誰を最も高く評価していたのか、おわかりですか。
Isaacson氏:Steveは(FacebookのCEOである)Mark Zuckerberg氏を評価していました。なぜなら、製品を作っており、金儲けをするだけでなく永続的な企業を創り出したからです。最も困難なことは会社の立ち上げではなく、その経営であるとSteveはわたしに言いました。また、Zuckerberg氏は自分がこうあってほしいと考える会社を創り出そうと努力していることも評価する理由だと語っています。起業家は、創業後に出て来た大変な仕事をしているわけではない、とSteveは言いました。
--それに関連して、Jobs氏はNeXT時代をどのように捉えていましたか。Jobs氏は同社に10年以上在籍していましたが、そのことについては死後のほとんどの報道であまり語られていません。
Isaacson氏:NeXTについてはインタビューであまり時間を割かなかったので、わたしは自分で調べました。SteveはAppleから追放されたことで成長したと言われていますが、わたしはNeXTでの経験が役立ったと思います。
同社でJobs氏は、良くも悪くも本能の赴くままに突き進みました。完璧なロゴと完璧なデザインを備えたキューブを産み出しましたが、製品としてはあまりにも高価で凝り過ぎたものであったため、実に良い製品であったにもかかわらず、発売においても市場においても困難に直面しました。Steveはそのときまで、時に必要となる理にかなったトレードオフをどう行えばいいのか分からなかったのです。
Macチームの最初の撤退の際、Steveはホワイトボードによく格言を書いていました。初めに書いたのが、「妥協するな」です。すばらしい格言ですが、NeXT時代のSteveは極端過ぎました。Steveの歯止めになる者がいなかったのです。それは非常に登場が遅くかつ非常に高価な、妥協のないマシンでした。NeXT時代のSteveは外部委託を行わず、汚れのない白さの壁の工場を自分で作り、デザインを自分でしなければなりませんでした。これがJobsとTim Cook氏ほかの面々がAppleで学んだことです。何をするのが理にかなっているかを見つけ出し、それを他人に任せることができます。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
「もったいない」という気持ちを原動力に
地場企業とともに拓く食の未来
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力