--Jobs氏がインタビュー対象者としてどうだったかをお話しいただけますか。おおらかで協力的でしたか。それとも、ほかの完璧主義者たちのようにインタビューを「管理」しようとしましたか。
Isaacson氏:インタビューをしているという感覚はほとんどありませんでした。いっしょに庭を散歩していましたし、そうでないときは単に何時間も会話をしていました。わたしはSteveの話に耳を傾け、彼は後ろにもたれて、あらゆることを話したがりました。
--仕事中のJobs氏に密着したことはありますか。
Isaacson氏:それほど多くはありません。仕事では何度か会った程度です。警備が厳重なデザインスタジオに入ったことがありますが、そのときはSteveではなく、Jony Ive氏がいっしょでした。
--それはどのような感じでしたか。
Isaacson氏:秘密というわけではありませんが、それほど解放されているわけでもありません。厳重に守られていました。伝記の中には、そのデザインスタジオの中を歩き回りながら、Steveは次期製品のひな形や電源コードを愛でるのが好きだという話をJony Ive氏から聞くくだりがあります。Steveはそれらの製品に問題がないという感触を確かめていました。デザインのように細かなことについてもです。JonyとSteveが1990年代後半、初代「iMac」に取り組んでいたとき、Jonyは上面に凹部を設けてそこに取っ手を付けたいと考えました。iMacはデスクトップなので人々が持ち運ぶことはないのに、です。SteveはそれによってiMacの親しみやすさが増すことを直観的に理解しました。その取っ手によって人々はiMacに手を触れることを許されたのです。
そのほかにも、彼は製品の部品にまで情熱を注いでいました。アーティストであろうとする発展的な情熱で、どうすれば利益を最大化できるかということとは対照的な情熱でした。
--人々がJobs氏に関して抱いている誤解の中で、この伝記によって変えられるかもしれないと思うものはありますか。
Isaacson氏:わたしは、時として人々につらくあたるという形で反映される感情的な一面を、前後の事情を含めて描こうと努めました。伝記の中で、Steveに立ち向かって成功した人がいること、そのように感情的に人々と接することが、同氏に立ち向かえる一流プレーヤーの中から平凡な人々をふるい落とすのに役立つことが書かれている部分があります。
Steveがコーディング担当者を怒鳴りつけていたことや、単に誰かに怒鳴っていたということを話す人はたくさんいます。Steveが最初にAppleに在籍していたころは、それが原因で問題が発生しました。しかし当時でさえ、最もうまく彼に立ち向かった人には賞が用意されていました。彼はそれに気付き、大いに気に入りました。それを行った2人の人物は、いずれも女性で、昇進を果たしました。
Steveの話は、「わたしはカリフォルニア出身の中流階級の子供にすぎない。チームに平凡なプレーヤーが紛れ込まないように目配りをするのがわたしの仕事だ。そうするのには理由がある」というものでした。このように、背景を理解できるようになるとわたしが期待しているエピソードは他にもいろいろとあります。
まだ理解されていないこの伝記の別のテーマは、Jobs氏には2つの面があるということです。1つは、カウンターカルチャー、反抗的、そしてニューエイジの精神的な面です。もう1つは、頑固なエンジニア、テクノロジスト、経営者という面です。彼の人生のテーマは、この2つの面が衝突し、後にそれらを融合させていくというものです。
そして、プライベートでのSteveがいます。非常にニューエイジ的な人々と付き合いますが、最終的にはロマンチックな面を満たしてくれつつも、堅実で分別があり、しかし聡明な人物を見つけます。
がんについても同様です。周知のとおり、Steveは代替療法を選択します。これにおいては、彼をDNAシークエンシングやターゲット療法など最新の科学的アプローチの発見に駆り立てたということを伴っています。彼は人生のあらゆる面において、優美で空想的な代替の要素と、スマートで理にかなったビジネス的要素を結びつけなければなりませんでした。SteveとWozが「Apple I」を生み出した時がそうでした。
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