こうした視覚的変化はみな些細なことに見えるかもしれないが、iOS上で動作するモバイルアプリケーションは相変わらず画面上に1つしか表示できないことを考えると、その効果は大きい。例えば、ニュース閲覧用のアプリケーションを起動中に新しい電子メールが届いた場合、画面を上から下にスワイプすることで電子メールの受信箱と同様のプレビューを確認できる。こうした通知機能はApple製アプリケーションだけでなく、サードパーティーのアプリケーションでも利用可能となっている。
iOS 5によって、AppleはiOSプラットフォームの統合も進展させ、最新モデルのすべてのデバイスに対してほぼ同じバージョンのソフトウェアを一度に対応させた。
「iOS 4」搭載のGSM版およびCDMA版iPhoneユーザーを思い起こすと、CDMAユーザーは一部の魅力的なソフトウェアを利用できないままである。iOS 5では異なるアプローチが取られており、最新モデルのユーザーは(「iPhone 4S」専用の「Siri」などは除き)すべて同じバージョンのソフトウェアを利用できる。ソフトウェアのマイナーアップデートのなか、このアップデートの傾向が今後も続くかは不明だが、Appleは今、すべてのデバイスにわたってゼロから再出発を図ろうとしている。
大型プラットフォームという発想をさらに強化させるのが、Appleが新たに発表したメッセージングプロトコル「iMessage」だ。Research In Motion(RIM)の「BlackBerry Messenger」プラットフォームと同様、iMessageは専用クライアントソフトで、iPhoneのSMSアプリケーションのようにデータを使用することでiOSユーザー間のメッセージ送受信を可能にしている。これによって、「iPod touch」とiPadユーザーも初めてApple製アプリケーションでのメッセージングが可能となったほか、AppleのSMSアプリケーションでキャリアが提供するSMSやMMSサービスを利用しなければならなかったiPhoneユーザーにとっても選択肢が増えたことになる。
iOSユーザーはこれまでサードパーティーのメッセージアプリケーションやIMクライアントを利用していただろうが、iMessageが他と一線を画しているのは、iOSユーザー全員が利用できると根本から保証している点だ。そしてiCloudと同様、テキストメッセージ利用料金の節約という可能性があるため、ユーザーがAppleのシステムを継続利用し、手放さない動機ともなる。
これらすべてを1つにまとめた今回のiOSアップデートは、恐るべきものだ。2010年に実施されたiOS 4のマルチタスク対応のアップデートのような著しい変化ではないものの、既存のiOSデバイスユーザーに新たな利用方法を提示してみせ、iOSがより強力なスタンドアロンのプラットフォームとなる直前まで迫るものといえる。このことは、将来ほかのデバイスがiOSファミリーに加わるとすれば、非常に重要な意味を持つ。
新型iPhone 4SとiPodの見どころ--どうなるiPhone 5
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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