しかし、4日のイベントで再び強調されており、おそらくわれわれがもう少し早く理解しておくべきだったのは、Appleがプレゼンテーションの場面では社内のほかのリーダー、特にPhil Schiller氏とScott Forstall氏に頼るようになったことだ。両氏はそれぞれ、Appleのマーケティングと「iOS」ソフトウェアを担当する幹部だ。Schiller氏は製品発表の場でJobs氏の補佐役を務めてきており、Jobs氏が医療休暇中だった2009年のMacworld Conference & ExpoとWorldwide Developers Conference(WWDC)では基調講演も行っている。一方のForstall氏は、「Mac OS X」の開発に携わっていたところから、同社の収入源として圧倒的に大きな割合を占めるモバイル向けソフトウェア事業の責任者を務めるまでになった。さらに、同社のインターネットソフトウェアおよびサービスを率いる立場に最近昇格したEddy Cue氏や、オペレーション担当シニアバイスプレジデントのJeff Williams氏など、幹部には優秀な人材がそろっている。
しかし、Jobs氏以後の時代で最も興味深い人物は、おそらく工業デザイン担当シニアバイスプレジデントのJonathan Ive氏だろう。Jobs氏は、製品の試作品のデザインというどこにも行き着かないような仕事からIve氏を引き抜いて、同社のデザインを行う側近グループに引き入れたとされている。この2人は、デザインの好みが共通していてお互いを称賛し合っており、そのことはAppleが最も象徴的な製品のいくつかを作り出す原動力になったという話もある。Jobs氏がもはやそうした創造的プロセスにかかわらない状況で、Ive氏はこのままとどまるのだろうか、それとも独立するのだろうか。
Appleが小売担当幹部の後任を誰にするのかという点にも興味がある。小売担当幹部は、ほんの一握りの店舗から、現在では世界中で357店舗に増えた同社のビジネスに不可欠な存在を扱う。この部門の功績の大部分はRon Johnson氏によるものだ。同氏はAppleの小売担当幹部だったが、2011年前半にはJ.C. PenneyのCEOになるためにAppleを退職することを発表しており、11月には着任予定である。AppleはJohnson氏の後任をまだ発表していない。
最後に、Appleという企業が考えを述べることにおいて、将来的に不確実な面がある。同社の基本姿勢について、人々の目はJobs氏に向けられるようになっていた。Appleが寄せ集めの成り上がりから大企業へと姿を変えてからも、そのCEOで共同創業者でもある人物は、顧客からの電子メールに個人的に対応しようとしていた。
Jobs氏のおかげで、法的文書の言い回しからApp Storeのガイドラインのようなものまで、読めばAppleの文書であることはすぐに分かった。Jobs氏は時折、技術的な書状を書いてAppleのウェブサイトに投稿することもあった。最近発表された「Thoughts on Flash」という文書はAdobeのFlashテクノロジに対する徹底的な批判であり、Jobs氏はFlashには不備があって、物事の発展の妨げになっていると指摘していた。実際のところ、Cook氏が「Thoughts on Flash」のようなものを書くとは筆者には考えられない。ただし、もしかしたら筆者はCook氏のことを十分に知らないだけかもしれない。
1つ確かなことは、Jobs氏はAppleに、成功を積み重ねるための基礎を残したことだ。その先にはまだ、2015年に完成予定の新しいキャンパスや、これまで通りに積極的な新規地域への小売店拡大計画、そしてこれまでにない数の音楽、書籍、映画、テレビ番組、ソフトウェアを販売するために立ち上げられたデジタル帝国がある。
その後がどうなるかは、Appleにしか分からない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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