確かに、Pixarはこのシーンを詳しく調べて、いくつかの要素を「巧みに解決する」ことができた。しかし、概してその結果で示されたのは、弾丸やそれが的中する物体に物理学を適用することでPixarが作り出せるものは何かということだった、とShah氏は言う。それは、銃から発射される弾丸の剛体力学や、銃から立ち上る煙の質量など、複数のシミュレーションを同時に行うことだった。壁に開いた弾痕は実際の物だが、これは、壁の上にもう1枚の面を追加することでできた「ごまかし」だとShah氏は言う。しかし、このシーンの弾丸は、物理エンジンが予想する通りに動いており、人手によって具体的な指示はしていない。
Pixarがこうしたことを実現できる秘訣の1つが、当地の本社ビルにある、巨大で強力なレンダーファームだ。この処理能力は本格的なもので、「カーズ2」では、各フレームのレンダリングを平均11.5時間で行った。
しかし、中には特に複雑なシーンもあった。とりわけ複雑だったのは、レイトレーシングを含むシーンだ。これには表面に当たる光のシミュレーションが必要になるため、基本的には「光の粒子をシミュレーションしようとする」ことになる。その結果、フレームのレンダリング処理には80時間から90時間もかかり、多大な処理能力が必要だったとShah氏は語る。それはつまり、Pixarが「レンダーファームを増強した」ということだ。
Pixarはレンダーファームの規模を3倍にする必要に迫られた。現在のレンダーファームには、Dellのレンダリング用ブレードに1万2500個のコアがあるという。同時に、「カーズ2」の制作に対応するために、ファイルサーバやネットワークのバックボーンなど、コンピュータシステムというパズルのあらゆるピースが増強された。
しかし、Pixarの今後の映画では間違いなく、そうしたコンピュータインフラにも重い負担がかかるとShah氏は言う。そういった映画は、「カーズ2」のためにサーバのスケールアウトを行った恩恵を受けるが、今後のプロジェクトから、Pixarがレンダーファームを再度拡張せざるを得なくなるような、新たな創作活動上の課題が出てくるのは間違いない。Shah氏は、人間のキャラクターやその肌、髪、衣服などでは、現在のレンダーファームでも限界まで働かせる必要があるはずだと述べている。
Pixarは、差し当たりとはいえ、「カーズ2」では最先端のテクノロジが使われていると考えている。しかし、あらゆるテクノロジにとって重要なのは、物事を本物らしくすることであり、Pixarが心の底から願っているのは、観客がそのテクノロジに決して気づかないことだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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