映画「カーズ2」の新技術--ピクサーが魅せるデジタルアニメーションのさらなる高み - (page 2)

Daniel Terdiman (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2011年07月29日 07時30分

 それを実現するため、チームは水面を表現する一連の新しいシステムを調査し、最終的に「Tessendorf」と呼ばれる数理的な波モデルを応用した、とShah氏は述べた。これにより、今までよりも「波頭が立った」鋭利な海の波を表現できるようになったという。

 石油掘削施設のシーンでは荒波の中を揺れながら進む大きなボートが登場することも、波の表現が重要だった理由だとShah氏は説明する。ボートが水にぶつかり、水がボートに激しく打ち付けるシーンでは、荒々しい海を表現する必要があった。そのため、このボート(これも同作品のキャラクター)が水面を揺れながら進み、波や泡を立てながら航跡を発生させるのを、本物のように表現する方法を見つけることが非常に重要だった。Pixarは、視覚効果が極めてリアルでなければ、観客はそれを真に受けないだろうと考えた。

 そして、もう1つ別の難題が持ち上がった。石油掘削施設のシーンは夜なので、水面はさまざまな光で照らされている。そのため、同チームは照明効果も本物のように表現する必要があった。Shah氏は「通常、これまでの映画では水を面のように扱ってきた。多少の詳細が描かれていることもあるが、ほとんどが2Dの面のようになっている。われわれは、水をボリュームのあるものとして扱いたかった。したがって、サーチライトが水面を貫くとき、観客はその水の質量を感じることができる」と述べた。

 チームは、水面に浮かぶタイヤが水中深くに落とす影についても、同様に扱った。

 こうしたことはどれも、単なる技術的成果ではない。Pixarはストーリーテリングと創造性で知られているが、Shah氏によれば、この映画を制作したアーティストたちにとって、洗練された水の視覚効果を生み出すテクノロジの実現は、あらゆるものの中で最も重要であるストーリーに貢献するためのものだという。そのシーンで観客が目にするのは、この映画の主人公の1人であるフィン・マックミサイル(Michael Caineが声優を担当)を捜索するシーンだが、Pixarは、観客の目を貧弱な視覚効果に向かないようにしてこそ、このシーンの感動が高まることを分かっていた。そしてこの場合、この課題を解決するための手法を生み出すことを意味していた。

 「われわれは、新しいことをするのを目指しているのではない。ストーリーボードを見て、今までのテクノロジでは必要なことが実現できないと感じれば、テクノロジを前進させてみようと考える。それは、何をスクリーン上で表現したいか、そして欠けているのはどのツールか、ということに帰結する」(Shah氏)

反射

 車を主人公にした、ストーリー展開と風景が派手で華々しい映画では(舞台となるのはイタリア沿岸部の街の周辺、さらには東京の煌々とした夜景の中だ)、それがたとえ言葉を話すような車でも、視覚効果で手抜きをして、その車のリアルさを失わせるわけにはいかなかった。

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