GoogleとAppleはクラウドコンピューティングに対して基本的に異なったアプローチを採用している。こういったアプローチの違いを理解しておくことは重要であるため、本記事ではクラウドに対する両社のビジョンについて考察する。
Appleは米国時間6月6日、Worldwide Developers Conference 2011(WWDC 2011)の基調講演において「iCloud」を披露した。これに伴ってTechRepublicが開催した実況解説およびオンラインチャット(内容についてはこの記事のページ下部にあるログを参照)の最後で、筆者はチャット参加者らに対してAppleのクラウドが「All your base are belong to us(あなたの基地はすべてわれわれの支配下にある)」型のクラウドではなく、「ストアアンドフォワード(保存して転送する)」型のクラウドであると説明した。その際には、インターネットでの流行語や専門用語を用いて、冗談めかして説明したものの、この比喩はAppleのクラウドとGoogleのクラウドの違いをかなりうまく表現したものとなっているはずだ。
では、詳しく見てみることにしよう。
クラウドに対するGoogleの戦略やアプローチはおしなべて、現在のインターネットではなく、未来のインターネットを前提としている。同社は、そう遠くない未来に、あらゆる場所で低コストのインターネットアクセスが可能になると確信しているのである。同社の描く未来図には、オフィスや家庭での光ファイバ接続や、地球のほぼ隅から隅まで行き渡った超高速モバイルブロードバンド網も含まれている。
Googleはこういった世界に向けたクラウドを構築しており、同社のアプリケーション一式が洗練され、完璧なかたちで動作するようになる頃には、ブロードバンドが世界の隅々まで行き渡っているはずだと考えている。Googleのアプリケーションすべてがインターネット接続に依存しており、またすべてのデータはGoogleが管理するサーバのクラウド内に格納されるという形式では、こういった前提が必要不可欠なのである。同社が提供する優れた機能(同僚が編集しているさまをリアルタイムで確認できる「Google Docs」の同時編集機能など)の多くは、インターネットに接続していなければ利用できないというわけだ。
筆者は、ブロードバンドの未来に対するGoogleの楽観主義を嫌ってはいないものの、自由市場の原理のみに依存している状況では、こういった未来がひとりでに実現するとは考えにくいだろう。高速アクセス網を配備しても経済的な利益を得られない(そして将来的にも得られることはない)地域がたくさんあるのだ。Googleのビジョンを現実のものとするには、大規模市場においてより大きな競争原理が働くようになり、それ以外の市場においては公的機関と私企業との間のパートナーシップが強化されるようになる必要があるはずだ。
Googleは、特に「Chromebook」向けに、重要なアプリケーションをオフラインでも使用できるようにすると発表している。同社は既に「Google Gears」において、小さいながらもその一歩を踏み出している。とは言うものの、オフラインでのアクセスはGoogleが提示するソリューションの本質的な構成要素ではなく、後から追加されたものであるということを考えると、オフラインでのアクセスやローカル環境との同期は、同社にとって優先順位の高いものではないと判断できるだろう。
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