「iCloud」予告の謎--秘密主義のアップルが見せた変化

Greg Sandoval (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2011年06月03日 12時25分

 Appleは秘密主義と意外性を基本として動いている企業だ。そのAppleが米国時間5月31日朝に、6月6日から開催のWorldwide Developers Conference(WWDC)で発表される製品の一部として「iCloud」の名前を挙げたのは、同社らしからぬことだった。

 大きな発表はイベントまで取っておくというのが、長らくAppleがとってきた方法だ。たとえ製品やサービスのさまざまな詳細が発表のだいぶ前に漏れていても、それは変わらなかった。

 2010年のWWDCでは「iPhone 4」がその製品だった。iPhone 4は、WWDC 2010で正式発表される2カ月近く前に、写真や動画がGizmodoに掲載されていた。Appleの最高経営責任者(CEO)Steve Jobs氏が同イベントで、既に見たことがある人もいるかもしれないとジョークを言ったほどだ。WWDC 2010の前に発表されたAppleのプレスリリースは、Jobs氏が基調講演を行うこと、そして同イベントの入場券が8日間で売り切れたことしか伝えていない。

 しかし今回は少々事情が違っている。新型iPhoneの発売日は2011年後半、おそらく9月ごろだとうわさされている。もっと重要なのは、新型iPhoneが既存モデルの再アップデートだと言われていることだ。いくつか機能の調整が行われているが、辛うじて「iPhone 4S」と呼べるくらいの変更しかないと考えられている。Appleが「iOS 5」の紹介の中で、結果的に新iPhoneの詳細を明らかにすることになるとしても、今はっきりしているのは、WWDC 2011はソフトウェアが中心だということだ。

 iCloudについてはどうか。まだリリースされておらず、これまで発表されていないサービスにAppleが言及した理由の1つは、既に秘密が漏れてしまっていることかもしれない。Appleがクラウドサービス企業のXcerionから、「iCloud.com」というドメインをいち早く購入していたことが、4月下旬にブログGigaOMによって明るみに出ている。その後Xcerionは、自社サービスの名称を「CloudMe」に変更した。またiCloud.comへのアクセスはCloudMe.comというサイトにリダイレクトされるようになっており、ユーザーにはブックマークの変更を求めている。ドメイン購入額は450万ドルと伝えられているが、実際の額は明らかになっていない。

 iCloudにはどのような機能があり、Appleの既存のソフトウェアやサービスとどう連携するのか、そして料金がいくらになるのかは、まだほとんど分かっていない。Appleのクラウドへの取り組みにかかわっているとされる企業については、レコード会社から映画スタジオまで、かなり詳細に報じられているが、それ以外は表沙汰になっていない。

 そのほかにWWDCで発表予定の「Mac OS X Lion」とiOS 5の2つはどうだろうか。Mac OS X Lionは既にプレビューが公開されており、Appleが2010年10月にこのOSを初めて披露して以来、開発者はいくつかのビルドを受け取っている。Lionについて分かっていないのは、価格と発売日だ。また、これまでのMac OS Xのメジャーリリースと同じように、Appleが追加機能をいくつか投入するかどうかも不明だ。

 一方、大きな謎であるのがiOS 5だ。前回が「iOS」と呼ばれるようになった初めてのバージョンだったにもかかわらず、バージョン番号に言及したのは今回が初めてである。先日まで「iOSの未来」と言っていたのに、具体的なバージョン番号を発表すること自体、Appleのいつものやり方ではない。先週の報道では、AppleはiOSの通知システムを刷新するとともに、ウィジェットを追加する予定だとされている。また、どのデバイスがiOS 5を搭載できるようになるのかという疑問も残っている。これは、新しいモバイルハードウェアが登場するかどうかにも密接に関係する決定だ。

 では、何を発表するかについて、事前に地ならしをするのはなぜか。1つには、そうすることで期待が高まるからだ。今はこれらの製品だけに期待が集まるようAppleが調整している。そのため、もし、WWDCで次世代iPhoneを発表するようなことが仮にあれば、大きな驚きとなるだろう。また、こうした動きは、イベントにやって来る開発者や報道関係者などあらゆる人々に、具体的な製品を意識させることになるので、何がないかではなく、何があるのかに注目が集まることになるだろう。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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