しかしMicrosoftは、Skypeを独立したプロフィットセンターにしなければならないわけではない。Microsoftには、Skypeのテクノロジを取り入れることで強化できる事業がいくつかある。少なくともそれは確実だろう。Microsoftは「Outlook」「Messenger」「Hotmail」「Xbox Live」「Lync」といった自社のリアルタイムコミュニケーション製品のラインアップにSkypeを加えることができる。また「Windows Phone」にSkypeを搭載することもできる。
Ballmer氏はサンフランシスコで開催のイベントで、動画を使った遠隔学習や家族間コミュニケーションなどについて語り、「われわれは距離やデバイスに制限されないエクスペリエンスの構築を思い描いている。MicrosoftとSkypeが手を携えて、そのような未来と、それが具体的にどのようなものになるかを定義する」と述べた。
Ballmer氏は、息子の学校で最近あった面談について、そして渋滞で時間どおりに学校にたどり着くのに苦労したことについて語った。同氏は目的地へ急ぎながら、校内のコンピュータに搭載されているはずのカメラと無線ネットワークのことを考えたという。それらを使えばオフィスから面談に参加できただろう。「そのようなことを行うのにもっといい方法がある」(Ballmer氏)
同様に重要なのが、MicrosoftがSkypeユーザーに他のMicrosoft製品を売り込んで、Outlookなどの製品を通じてユーザー同士をつなげられることだ。今回の買収取引には、Microsoftの既存コミュニケーション製品の価値を高める可能性がある。また、そのようなユーザーがGoogleやAppleの競合テクノロジを使用する理由付けを弱める可能性もある。
MicrosoftはSkypeのテクノロジを、統合コミュニケーションソフトウェアLyncからXbox用モーションセンサデバイス「Kinect」まで、さまざまな製品に取り入れる予定だ。Skypeの広範囲への普及ぶりから、Microsoftはさらに大きな顧客基盤を確立できると考えている。ビジネス会議から遠隔学習、家族間コミュニケーションに至るあらゆる場面においてSkypeの利用促進を図れるだろう。「Skypeの浸透範囲を拡大したい」(Ballmer氏)
Microsoftはこれまでも買収で取得したテクノロジを既存事業に取り入れてきた。2007年には音声認識企業Tellme Networksを8億ドルで買収した。現在そのテクノロジを使用して、携帯電話に声で検索キーワードを入力して「Bing」でのウェブ検索を行えるようにしている。またKinectにもTellmeのテクノロジを採用しており、Xboxを音声コマンドで操作できる。
Ballmer氏が、今回の買収は「部分を足し合わせるよりもはるかに大きい」と熱く語るのはそのためだ。
そして、Microsoftが進んで同社史上最高の買収金額を支払う理由もそこにある(今回の買収で、aQuantiveの60億ドルはMicrosoft史上2番目の金額となった)。以前Skypeを所有していたeBayと異なり、Microsoftには実際にSkypeとの相乗効果を期待できる点がある。Microsoftの真の課題は、Skypeから利益を生み出すことではなく、いかにSkypeを利用してMicrosoft製品を強化するかということになるだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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