11月25日、26日の2日間に渡って開催されたユーザーイベント「The Microsoft Conference + Expo Tokyo」でクラウドサービスの重要性を語ったマイクロソフト。同社はベンチャーのクラウド利用についても、積極的に支援をしている。
マイクロソフトのベンチャー支援プログラム「Microsoft BizSpark」の参加者でもあるステップワイズとゼブラルは、クラウドプラットフォーム「Windows Azure Platform(Azure)」のユーザーでもある。両社にベンチャーがAzureを導入するメリットについて聞いた。
ステップワイズは中小企業向けに販売管理システム「VENTA」を提供する愛知県名古屋市の企業だ。最近ではインターフェースにSilverlightを採用し、マルチスクリーン対応を想定した「VENTA for Silverlight」を展開している。これまでオンプレミスで提供していたVENTAだが、サーバやネットワークのコスト削減、そしてシステム構築のスピードアップに向けて、Azureを導入したという。
「すでに(Azure版を)数社が利用しているが、導入の期間が短いのが大きな特徴」と、ステップワイズ代表取締役の長谷川誠氏は語る。オンプレミスでの導入では、システム構築に1カ月程度必要だったが、「クラウドではパッケージをデプロイするだけですぐに導入可能になる。データの移行作業を含めても1週間程度、Azureの設定だけなら1時間程度で済む。業務としてもユーザーのニーズに合わせてシステムを構築するのではなく、ソフトウェアの提供だけに業務を集中できる」(長谷川氏)
また、サーバの運営などで物理的なリソースを必要としないことで、資金的なメリットを生んだという。「サーバの費用だけで40〜50万円、それに場所代やインフラの費用がかかる。この運用費がユーザーあたり4万円程度だったが、Azureに移行した結果、7000円程度になった」と語った。
一方のゼブラルは2008年の設立。各種のIR情報などをもとに作成した金融関連情報をXMLベースの言語「XBRL」形式で証券会社や会計事務所、弁護士事務所などに提供している。
同社では、自社サーバでASP形式でサービスを提供してきたが、「データをウェブサービスとして利用するのでなく、直接データベースを触りたい」というニーズが高まってきたのだという。そこで、リードオンリーのデータベースを提供するサービスにAzureを採用した。ゼブラル代表取締役社長の小畑実昭氏は「高度な分析をしていきたいという要望に対して、技術的な回答としてAzureを採用した」と経緯を語る。
またAzureを使ってサービスを提供したことで、「管理面では非常にコストメリットが出ている。初期投資については(自社で構築する場合に比べて)10分の1程度になった」という。
ベンチャーがクラウドプラットフォーム上でサービスを提供することで、コスト面でもスケール面でもメリットがあると語る2社。しかし一方で課題もある。中小の小売業などをターゲットとするステップワイズは、クラウドの認知向上が最大の課題と説明する。「40代前半くらいまでのユーザーには理解してもらえる。しかしそれ以上の世代には、技術的な話でなく、金額的なメリットを伝えていかなければならない。たとえばクラウドでサーバの電源使用量が別途かかる訳ではない、といったように具体的に説明している」(長谷川氏)
ゼブラルは、「新聞などでクラウドという言葉について知っているため、認知に問題ない」とした上で、「既存の延長上でいかにレスポンスをよくしていくかが課題。数十テラバイトのデータを扱うため、そのボリュームやトランザクションが課題になっている」と語る。
マイクロソフトデベロッパー&プラットフォーム統括本部の長井伸明氏は、ベンチャーのクラウド利用に対して「企業としての意思決定が早く、作ったサービスがそのまま実績にできる。(支援制度の)BizSparkを利用すれば、ソフトウェアも利用できる」とメリットを説明する。また同社のクラウド戦略については、「(マイクロソフトは)AzureやOffice 365など、クラウドについて全方向で製品を持っている唯一の企業。いろいろなところで連携できる準備ができた。2011年はこの動きをさらに加速させる」と語った。
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