解説:液晶パネル生産競争に食い込むパナソニックの世界戦略

 パナソニックグループで液晶パネル生産を行う「パナソニック液晶ディスプレイ」が、量産体制を加速する。

 同社は、千葉県茂原市と、4月から稼働している兵庫県姫路市に2カ所の生産拠点を持つが、このほど、姫路の生産拠点で開所式を行い、2011年2月に計画している81万台のフル生産体制の確立に向けて、準備が順調に進んでいることを強調した。薄型テレビにおいて、グローバルでの成功を目指すパナソニックにとって、プラズマディスプレイパネルを生産する尼崎工場と並んで、姫路工場はまさに戦略的拠点となる。

パナソニック液晶ディスプレイ 液晶パネル生産を行うパナソニック液晶ディスプレイ

 パナソニック社長の大坪文雄氏は、「姫路工場を大きな力の源泉として、グローバル市場に打って出る。攻めの経営を続けていきたいと強く決意している」と語る。

 パナソニック液晶ディスプレイ姫路工場は、2200×2500mmのマザーガラスサイズを利用した「第8.5世代」と呼ばれる液晶パネルを生産する。従来の茂原工場が第6世代の1500×1850mmのマザーガラスサイズで生産しているのに比べて、投資生産性を1.6倍に向上。32型パネル換算では、茂原工場では8面取りに留まっていたものが、姫路工場では18面まで取ることができるという。

 現在、32型換算で月産40万5000台の量産体制を敷いており、配線材料にアルミニウムを使用する茂原工場に対して、姫路では銅を使用。露光回数を5回から4回にするといった改良などにより、工程処理時間を20%削減。生産リードタイムも14%削減するといった進化を遂げている。

 実は、第8世代の生産設備については他社が先行している。それどころか、シャープの堺工場では第10世代の液晶パネル生産を昨年から開始。先ごろ、サムスンが第11世代の生産拠点を建設する計画を明らかにするなど、最先端のパネル生産拠点づくりに向けた競争が激化しているのだ。

 その競争という点では、第8世代は古くなる。だが、「遅く立ち上げたことで、他社の第8世代の生産設備に比べて、効率化や品質で優位性があると考えている。また、すでに利用されている設備などが応用でき、短期間で、低コストで第8世代を立ち上げることができた点は大きなメリットになる」(パナソニック液晶ディスプレイ 常務取締役兼姫路工場長の坪香智昭氏)としている。

 また、茂原工場が32型、37型の生産拠点であるのに対して、姫路工場は32型、42型を主力に生産できる拠点であるとともに、2011年2月のフル生産時には、19型および26型のパネル生産も開始。19型では50枚取りが可能になるという生産性の高さを生かした展開が可能になる。

茂原工場と姫路工場の比較 茂原工場と姫路工場の比較

 これまでパナソニックでは、19型および26型のテレビ用液晶パネルは、外部から調達をしていたが、これを内製化することで、より競争力の高い製品が投入できるようになるとする。

 姫路工場で生産された液晶パネルは、日本では茂原工場でモジュール生産およびテレビとしてのセット生産が行われる。また、海外向けにはチェコとマレーシアのモジュール生産拠点に輸送されてモジュール化。そこから、米国、メキシコ、ブラジル、中国、台湾、ベトナム、タイ、インドのセット工場で液晶テレビに組み立てられる。

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