さらに事態を分かりにくくしているのは、PCからiTunes Storeにアクセスすれば利用できるコンテンツの多くが、Apple TVからは利用できないということだ。ただし、それらのコンテンツはレンタルではなく購入のみのものになっている。このため、「The Office」の最新エピソードを見るためには、まずPCでその番組を購入してダウンロードが終わるまで待ち(これには高速な回線でも30分以上かかることがある)、それをPCからApple TVにストリーミングするという、非常にAppleらしからぬシナリオが必要になる。これは、Apple TVに期待される、ソファに座って番組を選べば、すぐにストリーミングが始まるというユーザー体験からはほど遠いものだ。
Appleが今後もコンテンツプロバイダと交渉を続け、より多くのテレビコンテンツをApple TVから直接アクセスできるようにしようとすることは確かだろうが、現在ストリーミングできる番組の品揃えは残念なものだ。
iTunes Storeから購入した動画に以外にも、PCあるいはMac上にあるその他の動画は、iTunesが扱える動画形式に変換しさえすれば、すべてストリーミングできる。ただ、変換のためのフリーウェアは豊富にあるが、フォーマット変換は時間のかかる作業だ。言い換えれば、自分がDivX、MKV、WMVなどの大量の動画ファイルを持っていたとしても、Apple TVがすぐにそれらに対応できるとは期待できないということだ。もし、これが一番の心配なら、WD TV Live PlusやSeagate FreeAgent GoFlex TV(あるいはPS3やXbox 360)などを用意した方が望みはあるだろう。
その他のサービス:3大サービスの他に、Apple TVではいくつかのコンテンツ供給元が利用でき、これにはYouTube、Flickr、MobileMe、ポッドキャスト、インターネットラジオが含まれる。Flickrは特に印象的で、自分の写真ギャラリーをiPhoneを使って閲覧したときにそれが際立つ。
その一方で、PandoraやRhapsodyといった音楽ストリーミングサービスを使い慣れているiPhone、iPod touch、iPadのユーザーは、これらのサービスがApple TVで利用できないと知ってがっかりするだろう。iPhone、iPod touch、iPad用のApp Storeは、あらゆる種類の開発会社に広く門戸を開いているが、Apple TVは依然として閉ざされたプログラムであり、どのサービスを追加するかはAppleが決定している。そこで、AirPlayが重要になる。
技術に詳しい人は、AirPlayをAppleの秘密兵器だと位置づけており、それには相応の理由がある。AirPlayの背景にある基本的なコンセプトは、iPhoneで再生できるどんなコンテンツでも(音楽であれ動画であれ)、数回タップしただけでApple TVに「送り込む」ことができるということだ。AirPlayの一番基本的な実装は、iOSが動くデバイスに元から入っているメディアプレーヤーで再生できる、すべてのメディアに対応するものということになるだろうが、われわれが話したAppleの担当者は、開発者が自分のアプリも追加できるようになると話していた。つまり理論的に言えば、iPadでPandoraを聞いている人は、Apple TVにはApp Storeがないという問題を乗り越えて、それをApple TVに簡単に送り込むことができるということだ(少なくともiOSが動くデバイスを持っている人であれば)。
概念的にそうなっているとは言え、AirPlayは残念ながら、AppleがiOS 4.2のソフトウェアアップデートを提供する11月まではテストできない。また、いくつのサードパーティーのアプリがこれをサポートするかによっても事態は変わってくる。結論は、もしAirPlayが宣伝通りのものであれば、Apple TVにとって競争の様相を一変させるキラーアプリケーションになり得るが、そうなるかどうかは、しばらく待って出てきたものを見るまでは分からないということだ。
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