9月20日、オーストラリアIR協会(AIRA)は、機関投資家/証券アナリストを対象にしたウェブの利用状況を調査した結果を発表し、「ソーシャルメディアなどの企業情報が正確かどうか、個人投資家は投資判断の前に各社の情報ソースでチェックするように」と提言した。
AIRAの調査によると、機関投資家/証券アナリストのうち74%は投資目的にソーシャルメディアを利用していないこと、しかも、全回答の半数(50%)が、こうした情報は信用に値するものではないと回答した。他方、ソーシャルメディアを利用しているという答えは26%もあったという。4人に1人を上回る。そして、ソーシャルメディア経由の情報が自分たちの投資判断に影響を与えているとする回答も全体の20%に上った。
これについて、イアン・マセソンAIRA理事長は「この調査で、ソーシャルメディアのような第3者による情報がどの程度、機関投資家や証券アナリストから信頼されていないか、それが明らかになった。プロの投資関係者は懐疑心をもっている。それだけに、個人投資家は、投資判断の前に必ずソーシャルメディア情報の真偽を確認されるように、と申し上げたい」と提言し、「上場各社はウェブ空間で自社について何が語られているのかについてモニターし、信頼できる企業情報ソースとして、自社発のソーシャルメディアを立ち上げるべきである」と続けた。
しかし、AIRAの調査に協力したファイナンシャル&コーポレート・リレーションズ(FCR)の幹部アンソニー・トレゴニング氏は、この調査について異なる見解を明らかにした。「オーストラリアで投資情報にソーシャルメディアを利用することはまだまだ初期的な段階である。オーストラリア企業はIR目的でソーシャルメディアを広く利用しているわけではないからである」、「しかし、ソーシャルメディア経由で多くの投資情報が伝搬しているので、ソーシャルメディアに対する投資家の関心は高まっていくものと予想している」とトレゴニング氏は語った。
米国・欧州の機関投資家/株式アナリスト448人を対象にしたコミュニケーションコンサルタント、ブランズウィックの調査リポート(サンフランシスコ・09年冬号)でも、彼らの47%が投資調査やアイデアに関連してファイナンシャルブログを読み、20%が株式推奨や投資決定にブログをという調査結果を発表している。さらに、その58%がソーシャルメディアなどのニューメディアは投資判断に大いに役立つと答えていた。
AIRAの調査によると、投資目的でアクセスしているソーシャルメディアとして、ホットコパー(17%)、シーキング・アルファ(10%)、リンクドイン(10%)、ユーチューブ(10%)が上位を占め、このほかにそれぞれ10%未満ながら、ウィキインベスト、モトリ・フール、フェースブック、ツィッターなどが続いた。
では、全体として、オーストラリアの機関投資家/証券アナリストはいったいどんな投資情報に頼っているのだろうか。AIRAの調査によると、ワン・オン・ワン(個別面談)やグループでの企業業績説明会。それにウェブサイト。それもASX(オーストラリア証券取引所)のサイト、株式関連情報のIRESS、そして各社のサイトだ。これにアナリスト・レポートや上場各社のEメール配信がトップランクの情報ソースとして挙がった。
中でも、各社の説明会への出席は機関投資家/証券アナリストが最も好む。動画配信は、その会社のウェブサイト経由がほとんど、インタビューを起こしたサイト掲載は人気がきわめて高い。さすがにプロフェッショナルらしく、80%の回答が、企業発信をその情報ソースに使っていると回答している。
先に、マセソンAIRA理事長が「個人投資家も投資判断の前に必ずソーシャルメディア情報の真偽を確認されるように、と申し上げたい」と提言したのも、当然だ。何事も情報の出所に基づいて確認することだ。それはプロの機関投資家/アナリストでも、個人投資家でも変わらない。
◇ライタプロフィール
米山 徹幸(よねやま てつゆき)
IRウォッチャー、埼玉学園大学教授。最近の寄稿に「〜サブプライム危機で情報ミスリード〜 シティのIR責任者が和解金の支払いに合意」(宣伝会議「広報会議」10年11月号)など。
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