マイクロソフトが開発中のクラウド向け次世代プログラミングモデル「Orleans」とは何か?

文:Mary Jo Foley(Special to ZDNet.com) 翻訳校正:末岡洋子2010年08月19日 13時54分

 Microsoftがクラウドプラットフォームで最大のセールスポイントとしているのは、開発者が「.NET」や「Visual Studio」をはじめ、すでに知っているプログラミングツールを使って「Azure」アプリケーションを開発できることだ。

 しかし、それだけではない。Microsoftの研究者らは現在、次世代のクラウドプログラミングモデルと関連ツールの開発に取り組んでいる。わたしが毎月更新しているMicrosoftの開発コード名リストに目を通したことがある読者ならお気づきだろうが、クラウドプログラミングモデルのプロジェクトといわれる「Orleans」だ。Orleansの概要や目指す方向性について、つい先日新しい情報を得たのでここで紹介したい。

 Orleansという開発コード名を知ったきっかけは、クラウド専門家でブロガーのRojer Jennings氏の記事だ。Jennings氏は2009年2月、「『Windows Azure』上で動く新しいソフトウェアプラットフォームで、クラウドサービスを容易に構築できるよう抽象化、プログラム言語、それにツールなどを提供する」としてOrleansソフトウェアプラットフォームが参照されているのを発見したと報告した。

 ではOrleansとは具体的には何なのか?OrleansはMicrosoftの「Common Language Runtime(CLR)」の抽象化のレベルを高めることを目的とした新しいプログラミングモデルだ。Orleansはコンピューテーションとデータストレージの単位として、“grain(粒)”というコンセプトを導入、データセンター間を容易にマイグレーションできるという。また、複製、パーシスタンス、一貫性を扱う独自のランタイムも含まれている。考え方としては、クライアントとサーバの両方で利用できる単一のプログラミングモデルを構築することで、デバッグ作業を簡素化しコードの移植性を改善できる、というものだ。

 以下に、Orleansに関するMicrosoft Researchのプレゼン資料を紹介する。

 スライドの中には、興味深い関連プロジェクトがいくつか出てきている。1点目のスライドにある「Volta」はMicrosoft Live Labsのプロジェクトで、数年前、特に詳しい説明もなく消滅している。Voltaは「Google Web Toolkit」対抗といわれており、分散アプリケーションの構築を可能にするよう設計されていた。3点目のスライドに「DC♯」とあるが、これは「Distrubuted C♯」のことだろうか?

 Orleansプロジェクトを率いるリーダー陣にJim Larus氏がいるようだ。Larus氏はかつて、Microsoft ResearchのマイクロカーネルOSプロジェクト「Singularity」に関わっていた人物だ。現在は、「コンピューティングの限界を拡大する」ことを目的に立ち上げたeXtremeコンピューティンググループでリサーチ・戦略担当ディレクターを務めている。コンピューティングの限界が拡大されている分野の1つがクラウドだ。ベンダー各社はデータセンターを大規模化、高速化し、同時に省エネを進め、性能も改善させている。

 新しい資料では、Orleansの今後のスケジュールに触れていない。実際のところ、Orleansが現時点でリサーチプロトタイプの段階にあるのか、単にスライドの段階なのかもわからない。ひょっとすると、2010年10月後半のカンファレンス「Professional Developers Conference」で詳細が発表されるかもしれない。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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