その第1弾として、MSRで開発したCTF(Collaborative Translation Framework:共同翻訳フレームワーク)を利用し、豊橋技科大のホームページや学内通知文書を、中国語、韓国語、タイ語、スペイン語、ポルトガル語、ドイツ語、アラビア語の7カ国語に翻訳。より多くの人が豊橋技科大に関する情報や、研究活動などを理解できるようにすることで、同大学の情報発信力の強化を目指すという。
合わせてMSRは、豊橋技科大との協力で得られたCTFによる翻訳事例などを、システムにフィードバック。より品質の高い機械翻訳エンジンの開発を行い、多言語情報処理の研究の発展に役立てる。ここでは、学内の学生ボランティアなどにより修正された翻訳内容が、MSRに提供されることになる。
マイクロソフトの最高技術責任者である加治佐俊一氏は、「マイクロソフトリサーチでは、1999年から機械翻訳に取り組んでおり、2005年に多言語化を加速するために、ルール化をベースにした機械翻訳から、統計をもとにした機械翻訳へと切り替えた。2007年からはクラウド時代を見越して、ウェブ上での翻訳サービスを開始しており、2009年のパブリックAPIの公表によって、OfficeやInternet Explorer 8、Bingなどの製品、サービスのなかにも取り入れられている。Office Word 2010では、リボンインターフェースからドキュメントの翻訳が可能なほか、Bingでも対訳を表示する形での翻訳サービスが提供されている。このサービスには1日あたり450万ページビューがあり、1秒間に50件ほど利用されている計算になる。日本からの利用は国別では2番目に多い」としたほか、「2010年3月に公表したCTFにより、ウェブ上の翻訳サービスでは音声合成などの新機能も追加された。豊橋技術科学大学との多言語情報処理に関する連携は、CTFの活用を促進させるものとなる。今後は、他の大学とも連携を進めていきたい」と語った。
MSRは現在、世界の6カ所に研究所を持ち、850名を超える研究者が所属。55以上の分野で研究活動を行っている。
洪氏は、「今後は、クラウド分野における研究に力を注ぐことになる。MSRの研究者すべてがクラウド分野の研究に関わり、クラウドを活用した研究も増えることになる」としたほか、「日本においては、5年ほど前から学術分野との連携を強化しており、それが第2フェーズへと入っている。2009年11月から取り組んでいる“Mt.Fuji Plan(マイクロソフトリサーチアカデミック連携プログラム)”は、共同研究、人材育成、学術交流、カリキュラム開発という観点から、3年間で数100万ドルの投資を行っている。日本における研究プロジェクト支援数は70以上に達している」とした。
同社では、Mt.Fuji Planの一環として行っている「マイクロソフトリサーチ日本情報学研究賞」の第2回受賞者が決定したことを発表。基礎的情報学分野においては、東北大学大学院情報科学研究科准教授の住井英二郎氏が、「プログラム等価性のための環境双模倣理論の構築」で受賞。応用的情報学分野では、国立情報学研究所コンテンツ科学研究系准教授の宮尾祐介氏(受賞時は東京大学大学院情報理工学系研究科助教)が、「深い構文解析とその応用」で受賞した。
同賞は、日本国内の大学および公的研究機関に所属し、基礎的情報学分野および応用的情報学分野において研究活動を行っている博士号取得後10年以内の研究者を対象に選考されるもの。受賞者には、賞金400万円が進呈されるほか、全世界のMSRの研究者とのネットワーキング機会が提供される。審査委員会委員長を務めた国立国会図書館長の長尾真氏は、「今回は全国の代表的な大学、研究機関など8つの機関から13件の応募があった。研究の独創性、インパクト、応用可能性、国際性、ポテンシャルといった観点から選んだ」とした。
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