専門書に適した電子書籍の普及目指す--マイコミ、技評らが電子出版を説明

 理工系出版社を中心に発足された「電子書籍を考える出版社の会」が7月1日、都内で出版社およびメディア向けの説明会を開催した。

 電子書籍を考える出版社の会は、理工系書籍を手掛ける数社の声がけにより設立された電子書籍コンソーシアム。英語では「eBook Study Group of Publishers」と表記されることから、会員間では略称「eBP」の名で呼んでいるという。今回明らかにされた設立趣旨には、以下の3点が挙げられている。

  • 電子出版について、Apple、Amazonなどのプラットフォーム提供者や著作権者と出版社間においては未だ取引モデルが確立していない状態。読者に豊富なコンテンツを急ぎ提供するために、入門書・実用書出版の立場から問題点を明確にして、あるべき取引モデルを新たに検討する必要がある。専門書・実用書は、ビジネス書や文芸書などとは異なる特性がある。
  • 同主旨の組織があれば、それらと連携して問題に取り組む。ゴールは、電子出版の促進に向けて専門書・実用書出版社がソフトランディングを行い、既存書籍出版と電子出版市場をあわせて拡大すること。
  • 電子出版における編集・販売上のさまざまな問題点について意見交換を行う。

 会は毎日コミュニケーションズと翔泳社、技術評論社の3社を中心に設立され、ソフトバンククリエイティブをくわえた4社が幹事社となり運営される。会の代表幹事には、毎日コミュニケーションズ 取締役出版事業本部長 滝口直樹氏が就任する。副代表幹事には翔泳社 取締役第1編集部・営業部担当 臼井かおる氏、相談役には技術評論社 取締役編集局長 加藤博氏、幹事にはソフトバンククリエイティブ 出版事業本部 営業部 コンテンツ開発室室長 梅屋文彦氏がそれぞれ就任する。事務局長は、技術評論社 クロスメディア事業部部長代理 馮富久氏。

滝口直樹 毎日コミュニケーションズ 取締役出版事業本部長 滝口直樹氏

 会が設立された経緯について、滝口氏は「コンピュータ書籍を中心に手掛ける出版社数社で検討を始めたころ、同時期に大手出版社を中心に電子書籍配信事業準備会社が設立された。これは歓迎するが、我々の商品とは違うことに気づいた。我々の出版物は版型が大きく、図版・写真が多い。値段が高い。商品モデルが違うのでは?と感じた」と説明。専門書・実用書に適した電子書籍のあり方を考えたい、と設立の意義を述べた。

 6月に会の設立を発表してからの反応は大きく、「ビューアを開発した、販売サイトを検討したい、などの問い合わせが来ている。異業種からの問い合わせも多い」(滝口氏)とのこと。発表当初は14社だったところ、現在では17社に増加したという。

 会の活動内容は、毎月1回開催される定例会のほか、テーマごとの分科会が計画されている。出版社以外の関連業種まで対象を広げてのセミナーも予定されているとのこと。参加資格は、出版社として営業している会社が前提で、制作のみ行う会社は含まない、としている。

馮富久 技術評論社 クロスメディア事業部部長代理 馮富久氏

 分科会は、「契約・権利分科会」「販売分科会」「技術分科会」「電子出版戦略分科会」が設けられる。契約・権利分科会では、著者との契約内容や出版社の権利に関する統一ルールの、共通の契約書フォーマットや電子版の価格・発売時期についても検討するという。販売分科会では、AppleやAmazonなど販売サイトに関する情報収集や、新しい販売方法を研究するとのこと。技術分科会では、電子書籍フォーマットについて検討するが、「新しいフォーマットをつくる気はなく、既存技術を適材適所で生かす方向で考えたい」(馮氏)として、独自フォーマットを策定する意図がないことを明らかにした。

 質疑応答では、語学・参考書系出版社の参加状況を確認する質問に対し、「ガイドブック系やメディカル系の出版社など、さまざまな実用系・専門系出版社から問い合わせがある。積極的な加盟と活動をお願いしたい」(滝口氏)として、コンピュータ・理工系書籍の範ちゅうに留まらない会の方針が確認された。分科会でGoogleを招へいする計画があることについて、当会員の出版社に無断で大量の書籍をスキャンした過去があるGoogleと話を進めるのかという質問に対しては、「確定していることはなにもない状態。そういったことも含めて検討していく」(滝口氏)と回答した。

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