期待高まるモバイルコマース〜韓国のケータイ事情〜

戸口功一(株式会社メディア開発綜研)2010年04月22日 10時09分

 一部の国では固定インターネット通信網よりも携帯電話でのデータ通信のほうが高速であり、設備投資コストも少ないため、携帯電話通信網が急速に拡大してきています。また一部の地域では3G網も普及し始めており、日本のようなリッチコンテンツも徐々に登場しています。

 今、世界的にスマートフォンが注目されていますが、そこではゲーム、音楽、動画、電子書籍、など多種多彩なコンテンツが入手できるオープンプラットフォームが展開されています。

 しかし日本で最も市場規模が大きいモバイルビジネスは、実はモバイルコマースということをご存知でしょうか。総務省によると、2008年の市場規模は8689億円であり、モバイルコンテンツ市場の約2倍の規模を誇っています。この日本固有のモバイルコマース現象に注目しているのが、お隣の韓国です。

 韓国は通信販売大国です。韓国の通信販売業界団体KOLSAによれば、2008年韓国の小売販売額は243兆ウォン(約20兆円)で、そのうち通販(オンラインショッピング含む)市場は、23兆ウォン(約1.8兆円)となっています。小売総額の約10%が通販市場になります。ちなみに日本は通販市場が4兆円、小売販売額が約135兆円なので、3%程度のシェアです。国の事情はありますが、韓国が他国に比べても通販の比率が高水準といえるでしょう。

 韓国の通販は、テレビ通販から始まりました(2008年4兆ウォン市場で日本のテレビ通販と同じ規模)。日本では根強いカタログ通販の市場は、ほとんどありません。しかしインターネット通販は急速に拡大しています。2008年でのインターネット通販のシェアは通販市場の80%を占めています。その中でもオープンマーケットと呼ばれる楽天市場のようなモールが急成長しています。

 今、最も大きなモールは、Gmarketです。韓国で成長した独立系モールでしたが、米国のebayが資本を入れ、さらに発展している企業です。流通総額は4兆ウォンを越えており、インターネット通販市場の約5分の1を占めています。韓国でも日本のようにモールの寡占化が進んでいるようです。

 急成長してきた韓国通販市場ですが、テレビ通販は伸びてはいますが、少し頭打ち状況が見え始め、カタログ通販は成長する兆しがなく、あとはインターネット通販がどこまで伸びるかにかかっている状況です。そこで期待されているのがモバイルコマース(韓国ではM-commerce)です。

 以前から韓国では日本のモバイルコマースに関心を示していました。しかし2010年以降、ようやく現実味を帯びた有望市場として喧伝されるようになってきています。2015年までにモバイルコマース市場を約1兆ウォンにすることを目標にした取り組みが始まっています。

 まだまだおまけやクーポン、ポイントなどに頼っている通販市場ですが、携帯電話やスマートフォンがそれらを吸収し、どこでもオンラインショッピングが可能な環境を整備し、目標達成に向け走り始めたようです。

 日本のモバイルコマースは、数年前から物販系よりもサービス系の伸びが大きくなってきています。このことから、日本はすでに、モバイルコマースでも次のステップに入っていることが伺えます。先駆けとして、モバイルコマースのソリューションを世界へ提供できる可能性は大いにあるのではないでしょうか。

 コンテンツは文化に関係し障壁が高いですが、物販やサービスは、ある程度統一された商習慣で展開できる可能性があります。日本のモバイルコマース企業も海外へ目を向け始めています。

 ジャパニーズケータイコマースの海外展開に注目しましょう。

◇ライタプロフィール

 戸口功一(とぐち こういち)  1992年(株)メディア開発綜研の前身、菊地事務所(メディア開発・綜研)にてスタッフとして参加。2000年法人化で主任研究員、2005年より現職。1992年電通総研「情報メディア白書」の編集に参加。現在も執筆編集に携わる。その他、インプレス「ケータイ白書」、「ネット広告白書」、新映像産業推進センター(現デジタルコンテンツ協会)「新映像産業白書」、「マルチメディア白書」、「デジタルコンテンツ白書」の執筆および経済産業省、総務省の報告書等を多数手掛ける。

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