ケータイ条例元年〜慌しさを増す自治体の規制への流れ〜

戸口功一(株式会社メディア開発綜研)2010年01月27日 15時34分

 2010年1月1日、全国初となる小中学生にケータイを持たせない条例が石川県で施行されました。本コラムでも以前取り上げた条例です。

 もう一度、経過を振り返ります。09年6月の石川県議会本会議で、小中学生に携帯電話を持たせないように保護者に求める改正条例が議員提案で提出され、賛成多数で可決されました。罰則規定はなく、防災、防犯など保護者が認める事情がある場合は除外される条文となっています。

 条例施行に先駆けた09年12月に、石川、富山、福井県のKDDI(au)とソフトバンク系の携帯電話販売事業者は、北陸携帯電話販売店協会を設立しました。その理由は、条例によって携帯電話に対する悪いイメージが広がることへの警戒感からです。携帯電話不所持を条例化するということは、いくら罰則規定がないにしろ、「子どもには携帯電話が危険なものですよ」と自治体がお墨付きを与えたとも言えるでしょう。飛躍して解釈すると、子どもに有害なものを販売していることになってしまいます。協会では条例施行後、販売店を通じて正しいケータイの利用やフィルタリングサービスの利用の呼びかけを、積極的に始めているそうです。

 関係者によると特に地方では、有害サイトの苦情は、携帯電話事業者及び販売店に向けられることが多いそうです。なぜなら、サイト事業者という存在自体の認識が低く、相談は必然的にケータイを購入した販売店へ、という流れのようです。その販売店でさえ、サイト事業者の団体であるMCF(一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム)やモバイルサイト認定機関のEMA(一般社団法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構)のことをほとんど知らない状況です。そこへいきなり条例が可決されるのですから、何が起こっているのかわからない状態でしょう。

 問題は、東京で行われている違法有害に関する相談窓口や、業界団体の取組みなどの情報が、広く全国にまで伝播しきれていないことからきていると思われます。自治体の条例化の流れも、ケータイの実態と様々な取り組みについて、正確に調査し検討された事案なのか、わかりかねます。

 民間関係者がネットの安心安全に対して自主的取り組みを推進する「安心ネットづくり促進協議会」では、ネット問題の情報共有を図るためにホームページ上に「もっとグッドタイムス」を創刊しました。今回の石川県の条例に関する当事者のインタビュー、子どもとメディアの関係など、興味深い情報が提供されています。

 あまりにも誇大に携帯電話を取り扱うのではなく、もう少し冷静になり、様々な角度からみていくことが必要かと思います。そんな中、東京都でも青少年と携帯電話に関する条例の動きがあります。青少年問題協議会において東京都が積極的に関与するという内容です。パブリックコメントは締め切られましたが、関係団体から様々な意見が寄せられたようです。東京都が与える地方への影響は計り知れません。きちんとした検証データをもとに、携帯電話と子供のあり方について対応して欲しいと思います。

◇ライタプロフィール
 戸口功一(とぐち こういち)
 1992年(株)メディア開発綜研の前身、菊地事務所(メディア開発・綜研)にてスタッフとして参加。2000年法人化で主任研究員、2005年より現職。1992年電通総研「情報メディア白書」の編集に参加。現在も執筆編集に携わる。その他、インプレス「ケータイ白書」、「ネット広告白書」、新映像産業推進センター(現デジタルコンテンツ協会)「新映像産業白書」、「マルチメディア白書」、「デジタルコンテンツ白書」の執筆および経済産業省、総務省の報告書等を多数手掛ける。

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