8月4日にインターネット上の違法・有害情報に関するトラブルの解決に向け適切な対応を行うために、電気通信事業者、サイト管理者、学校関係者、監視事業者、各相談者相談窓口の相談員等を対象にした相談窓口、「違法・有害情報相談センター」が開設しました。
相談センターは総務省から委託を受けた社団法人テレコムサービス協会内で運営されています。一般に“相談センター”といえば、対消費者をイメージしますが、この相談センターの特徴は、日ごろ消費者と向き合っている事業者の窓口を担当する方からの相談を受付けるところにあります。
9月1日に消費者庁が新設され、生活者重視、消費者保護を主眼にした体制がスタートしました。通常の消費者からの苦情や相談は、苦情先が特定されていれば、メーカー、小売店など企業の相談センターへ連絡します。特定されていない疑問に思う点については各地の消費者相談センターなどへといった流れです。
消費者庁の位置づけは自らも相談窓口を設けており、さらに地方の消費者相談センターを支援するといった関係になるのでしょうか。各省庁や企業への改善指導や指導後の改善レポート報告といった検証作業も入っているようです。既存の苦情相談については、今まで蓄積されたノウハウによって対応が進んでいくものと考えられます。しかし今、相談センター等で苦慮していることの一つがインターネット関連についての相談のようです。
その理由は、相談員のインターネットに関するリテラシーにあるとのことです(特にケータイインターネットについてはもっと大変との事)。その対応方法は難しく、相談員へのインターネット教育を施せばいいのか、インターネット専門の相談窓口を別途新設する必要があるのか、意見はわかれるところです。
一方、インターネットの安全、安心に関しては、子どもをどのように守るかという問題に比重が置かれています。4月1日から青少年の安全なインターネット利用環境整備に向けた施策の推進として「青少年インターネット環境整備法」が施行されました。
そこには、青少年へインターネット教育をしよう、フィルタリングを導入しよう、インターネット企業や携わる者は体制を整備しよう、など教育現場、社会、家庭の三位一体となった取り組みが推進されています。8月に設立された「違法・有害情報相談センター」は、当初、電気事業者4団体が通信事業者のための相談センターとして発足しましたが、前述のようなインターネットを巡る環境の変化や様々な要請を受ける形で、学校関係者や各々の相談窓口の相談員向けにも、相談を拡大することになったとのことです。
消費者から相談を受ける側がインターネット環境のモラルやガイドライン、法令を身につけ相談対応業務の向上を図ってもらうことによって、消費者が安全にインターネットを利用できることへ寄与していこうという取り組みです(回りくどいが重要です)。大手通信事業者は、法務部や顧問弁護士など企業内で相談体制が整備されているところが多く、この相談センターの必要性は少ないかもしれません。
しかし相談センターに寄せられた相談結果を踏まえ、自らのノウハウを反映させるなど、安全なインターネット環境整備のために寄与することは重要でしょう(ノウハウが企業秘密かもしれませんが‥)。
特に子どもの安全、安心には家族のリテラシーも勿論ですが、教育現場での対応も期待されています。しかし教育現場も消費者相談窓口の相談員と同じく、インターネットスキルの壁があります。せめて、現場で起こっている問題があるのであれば、上記相談センターに連絡することをお薦めします。
できたものは積極的に利用し、情報を集約した上で新たな対応に役立てる、そこからがスタートラインです。今後もこのような取り組みについて報告していきたいと思います。
ちなみに「違法・有害情報相談センター」は個人の相談は原則受付けていない ようなのでお気をつけください。
◇ライタプロフィール
戸口功一(とぐち こういち)
1992年(株)メディア開発綜研の前身、菊地事務所(メディア開発・綜研)にてスタッフとして参加。2000年法人化で主任研究員、2005年より現職。1992年電通総研「情報メディア白書」の編集に参加。現在も執筆編集に携わる。その他、インプレス「ケータイ白書」、「ネット広告白書」、新映像産業推進センター(現デジタルコンテンツ協会)「新映像産業白書」、「マルチメディア白書」、「デジタルコンテンツ白書」の執筆および経済産業省、総務省の報告書等を多数手掛ける。
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