7月17日に総務省と一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)が携帯電話端末向けに提供されているデジタルコンテンツ及びコマースの市場規模を発表しました。
それによるとモバイルコンテンツとコマースの合計で1兆3524億円(前年比117%)規模になりました。iモードが開始されてから10年経過していますが、その間、ずっと右肩上がりに推移しています。
特に2008年は経済不況、携帯端末の買い替え周期の長期化による端末出荷の落ち込みなど、消費者の懐具合が慎重になっている中、モバイル市場が20%近い伸びを示したことは驚きです。市場規模の内訳は、コンテンツ部門が4835億円(同113%)、コマース部門が8689億円(同119%)と、共に順調に拡大しています。
コンテンツ部門については、そろそろ踊り場を迎えるのではないかと思われていました。確かに、着信音系やゲームといった定番コンテンツの伸びは落ち着いてきましたが、電子書籍、装飾メール、交通情報、アバター/アイテム販売など、成長してきているコンテンツも出てきており、それらが市場全体を牽引するようになりました。特に電子書籍(ほぼコミックが中心ですが)は、400億円規模となり、音楽、ゲームに次ぐ第3のコンテンツへと成長しています。
ただし、電子書籍は一般のマンガとは異なる独自なコンテンツがヒットしており、表現面の問題が青少年に悪影響を及ぼすと一部で懸念されています(フィルタリング対象なので問題ないとの意見もありますが……)。さらに、モバイルコンテンツは1コンテンツ300円、400円のビジネスなので成長には限界があります。
しかし、既存メディア(音楽、ゲーム、書籍等)のデジタルプラットフォームとして、着実に地位を築いているといえるのではないでしょうか。 当然、次は動画配信コンテンツが注目されるでしょう。2009年の市場規模発表には項目として入っていることを期待します。
また、既存メディアのウィンドウではなく、新しいコンテンツとしては、アバター/アイテム販売が新規項目として発表されました。SNS系サイト、オンラインゲーム等で用いられるキャラクターやデジタルグッズのことですが、今までのダウンロード型のコンテンツとは異なり、クラウド型のコンテンツの楽しみ方として注目されています。この市場は広告、販促と引き換えのポイントを活用したアバター利用が中心ですが、決済機能を利用した購入市場が160億円規模ありました。このことは消費に対する価値観の変化を垣間見ることができたと感じています。
他方、コマースについてはケータイが物販、サービス等の予約ツールとして定着してきたことが9000億円近い市場規模になったと考えています。今ではコマース単体ではなく、当然のようにコンテンツサイト、広告サイトとの連携が進んでいます。また、ツールとしては交通系のチケットや、定期などの利用普及が進んでいます。さらに、公営ギャンブルではケータイブラウザからの購入が急増しており、いつでも、どこでものケータイの利便性が発揮されているようです。
周知の通り、携帯電話の普及は緩やかになってきていますが、ケータイを利用した商取引はまだまだ普及途上です。3.9G(LTE)の時代になれば、常時接続や動画ダウンロードもストレスなく利用できる環境が整うでしょう。その頃には携帯端末単体でコンテンツを楽しむのではなく、ケータイがハブとしての機能を持ち、車載空間(カーオーディオ)や家庭内AV機器へとリンクして楽しめる、シームレスな環境になっているのではないでしょうか。 その取り組みはすでに関係機関で進んでいるようです。
◇ライタプロフィール
戸口功一(とぐち こういち)
1992年(株)メディア開発綜研の前身、菊地事務所(メディア開発・綜研)にてスタッフとして参加。2000年法人化で主任研究員、2005年より現職。1992年電通総研「情報メディア白書」の編集に参加。現在も執筆編集に携わる。その他、インプレス「ケータイ白書」、新映像産業推進センター(現デジタルコンテンツ協会)「新映像産業白書」、「マルチメディア白書」、「デジタルコンテンツ白書」の執筆および経済産業省、総務省の報告書等を多数手掛ける。
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