iPad発売--まずはアップルがアマゾンに学ぶべき5つのこと - (page 2)

文:David Gewirtz 翻訳校正:石橋啓一郎2010年04月13日 11時00分

オープン性

 Appleの音楽を除くすべてのことに対するアプローチは、Amazonの正反対だ。iPhoneの場合、「機能が重複している」、何らかの利用規約に違反している、表現がきわどいなどの理由で、アプリケーションが使えなくなることがある。

 ところが音楽に関してだけは、非常に不適切な歌詞のものも含めて、Appleはほとんどあらゆるものについてオープンであるように見える。これも、AppleがAmazonを見倣うべき部分かもしれない。Amazonの行動は比較的予想しやすい。Amazonの戦略は大体において合理的であると仮定できるし、パートナーや顧客とコミュニケーションを取るだろうと期待できる。

 しかし、Appleは違う。1人のリーダーが動かしており、すべてのことは闇に覆われ、境界の外には役に立つ情報はほとんど漏れてこない。

 iPadは、すべてを結びつけるデバイスになる可能性を秘めている。すべての形式の電子ブックを表示でき、ほとんどのメディアを表示でき、デジタル世界を見渡すことのできる軽量な窓を提供してくれる可能性がある。

 しかし、Appleはオープンにすることを拒んでおり(Flashの例を見れば明らかだ)、同社のデバイス上のすべてのコンテンツを制限する権利を持つとも主張していることを考えると、iPadを信用することはできない。

 では、AppleはユーザーがiPadで読めるものを検閲するだろうか?AppleはユーザーがiPadで使おうとしているものを勝手に削除するだろうか?わたしは、自分の無線ネットワークで使われていないゾーンを調べるのに、手軽に使えるiPhoneの無線LANスキャナーアプリを使用していた。ある日、わたしがiPhoneをアップデートすると、このプログラムは消えていた。Appleがこの無線LANスキャナーを、「最小限の機能しか持っていない」とみなしたためだ。

 わたしは金を払ってそのプログラムを購入したのに、もはやそれを使うことはできなくなった。しかも、Appleは購入してからの日数が30日を超えていたことを理由に、たった2ドルの返金を拒んだ。そのプログラムは、確かにわたしの払った2ドルに見合う、最小限の機能を持っていた。しかし、Appleがわたしに使わせてもいいソフトウェアについて判断した結果、わたしはネットワークのテストに他のツールを使わざるを得なくなった。

 公平を期すために書いておけば、Amazonも「1984」で似たような離れ業をやったことがある(これが唯一の例だ)。しかし、Appleとは異なり、AmazonはKindleから電子ブックを勝手に消すことの愚かさを悟ると(消されたのが1984だったという皮肉もあり)、Jeff Bezos氏は謝罪し、決して同じことはしないと約束した。

 Steve Jobs氏が同じことをするところを想像できるだろうか。

読者はコレクター

 多くの熱心な読書家は、膨大な本のコレクションを持っている。自分のライブラリを他の人に見せることにも、それらの本に触れられることに対しても、プライドを感じている。デジタルの世界にもコレクションはあり、多くの読書家は、多くのプロバイダからそれぞれ異なるDRMの制約を受けた電子ブックをバラバラに買うよりも、1つか2つのプロバイダからのみ購入した大きなライブラリを作ることを好むだろう。

 このライブラリには、Kindleが選ばれる可能性が高い。Kindleでは2009年だけで3500万冊もの電子ブックが販売されており、品揃えも膨大なものだ。わたしは自分のKindleのライブラリを調べて見たが、そこには35冊収められており、しかもわたしはKindleを持っていない(一度は持っていたが、ひどいものだと思い、手放してしまった)。その代わり、わたしはKindleの電子ブックを自分のiPhoneで読んでいる。

 コレクターは、iBooksのライブラリ(それがどんなものになろうとも)にも惹かれるかも知れない。しかし、Kindleのライブラリにあるものは、今後も読むことができるのはほぼ確実だが(iPadで読むことができなくても、少なくとも他のデバイスでは読むことができる)、iBooksについては、(a)自分が欲しい本がiBooksで読めるとは限らず、(b)それらの本が、Appleの奇妙な基準に合致するように検閲されたり何らかの形で編集されたりしないとも限らない。

5つの教訓

 以下に、AppleがAmazonから学ぶべき5つの大切な教訓を挙げる。

  1. 競争を恐れず、競争相手と競争相手からの収益を吸収すること。
  2. 顧客が買うものを制限しないこと。
  3. 顧客が買ったものを、どこでどう使うかを制限しないこと。
  4. 予測できる態度を貫き、今後の行動に対する明確なガイドラインを示すこと。
  5. とんでもない間違いを犯してしまったら、謝罪して将来の方針を説明すること。

 これはAppleとAmazonだけの問題ではない。より多くの情報がデジタル化されようとしており、われわれが読む本はデジタル化され、ニュースもデジタル情報として入るようになり、雑誌やラジオ、テレビも電子的に配信されるようになっている中、情報コントロールの可能性は高まっている。

 これらの企業が、われわれが見るもの、読むものに対するコントロールを始め、われわれが何を考えるべきかを指図し始めるとしたら、これは単なる情報流通とDRMの問題ではなく、公民権の問題だ。

 この問題について考えてみるべきだ。まだそれが可能なうちに。

(情報開示:なお、著者はAppleとAmazonの両方から、少額の収入を得ている)

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ

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